LIFE HAPPY WELL福井 繁雄 19歳のある日、「薬飲んだら頭痛くなるんよ」という祖母の一言をきっかけに、残薬について考えるようになった僕。それから薬剤師になり、残薬解消のための活動を始めた。 このコラムでは、薬局薬剤師の僕が在宅や薬局での業務の中で行った、残薬に関する取り組みを紹介する。僕の奮闘記が全国の薬剤師の励みになるだろうかーー。 この記事のポイント お薬手帳に残薬数を書き込むおばちゃんがいた。医師にも薬剤師にも、遠慮せず、必要な薬剤数を主張する 患者さんは薬を受け取ったらすぐに仕分ければ、次の受診前に残薬を数えるのが楽だろう 薬局は患者さんに「何日分にしましょうか?」と聞いて残薬がないかを確認するとよい お薬手帳に残薬の数を書き込んでいたおばちゃん 「薬を飲むと頭が痛くなるんよ」――祖母の一言をきっかけに気がついた、大量の残薬の問題。近所のおばあちゃんも「薬が余ってしまう」と言っている。これが,全国規模で起こっているとしたら問題だ!薬学生だった僕は、早速、同じ大学の医学生や看護学生にも残薬に関する聞き込みを開始した。 薬学部を卒業し、薬剤師になった後も、残薬に関するリサーチを続けた。そのうち、退院する時にまとめて薬が出ることがあると知った。 退院時に30日分の処方が出ていても、次は14日後など、大抵すぐに受診する。そこで、次の処方は残薬を使って調整すればよいのだが、「ま、いっか」と言って見過ごしてしまったら?――その積み重ねが膨大な残薬に繋がる。 地域の基幹病院の門前に勤めていた頃。薬局に来た、あるおばちゃんの取り組みがすばらしかった。お薬手帳の薬剤名の横に残薬数を書いていたのだ。 「こんな患者さんいるんだ!」とても単純な方法だが、効果は抜群。当時はお薬手帳がそれほど浸透していなかったし、まして残薬管理にお薬手帳を使うという発想がなかった僕の目から鱗が落ちた。 病院でも薬局でも、おばちゃんは医師や薬剤師へ必要な薬剤数を主張する。血圧を測るように残薬数を記録していた。 もし薬が余ったって、このおばちゃんのように記録しておいて通院の度に薬局に伝えてくれたら管理しやすいのではないか?薬を受け取ったらすぐに種類ごとに仕分けていけば、次の受診前に残薬を数えるのも楽だろう。そのときに少しの手間がかかっても、大量の残薬がたまってから種類ごとに仕分けてかぞえるほうが大変だ。 「私たち薬剤師が、残薬の数を確認してお薬手帳や薬情に書けばよいのだ」と気がついた。 それから、薬局でも工夫するようになった。残薬がないか確認するために、患者さんにまず「何日分にしましょうか?」と聞く。そして、病院やクリニックに問い合わせをする。この問い合わせも、最初は医師の反応を想像すると聞きにくかったのだが、最近では先生の方も気軽に答えてくれるようになった。残薬調製を通じて医師と情報交換できる、ありがたい環境に変わりつつある。90日分(!)ということもあった退院時の処方薬も、今は7日分など、退院後の受診タイミングに合わせて出されている。 【福井繁雄氏プロフィール】 薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。 福井氏が勤め先の薬局で外来ケモ対応に奮闘する様子はコチラ!【迷走奔走外来ケモ奮闘記】--> 【研修会】 日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。開催スケジュール:日本薬剤師研修センター受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)