その言葉で、本当に伝わってますか?

薬剤師必見!残薬管理この一手! Life happy well 福井繁雄

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

LIFE HAPPY WELL
福井 繁雄

19歳のある日、「薬飲んだら頭痛くなるんよ」という祖母の一言をきっかけに、残薬について考えるようになった僕。それから薬剤師になり、残薬解消のための活動を始めた。

このコラムでは、薬局薬剤師の僕が、在宅や薬局での業務の中で行った残薬に関する取り組みを紹介する。僕の奮闘記が全国の薬剤師の励みになるだろうかーー。

この記事のポイント

  • 専門用語は予想以上に伝わっていない
  • 患者さんの生活に近い具体例を使って説明しよう
  • 正しい服薬方法や目的を理解してもらうことが服薬指導の目的

本当に、その言葉で伝わってるか?

 服薬指導していると、「この言葉って理解できているのかな」と、ふと思うことがある。薬の名前もそうだが、効果や服用時間帯など......薬に関わる言葉はカタカナ語か、専門用語が多い。それらの言葉との付き合いが長い薬剤師には、難しさの程度が分からない。

 薬剤師にとっては使い慣れた専門用語を、分かりやすい言葉に言いかえてみよう。

  • 血圧を下げるくすり
  • 眠りに入りやすくするくすり
  • 頭痛を和らげるくすり
    ......こんな感じで表せそうだ。

 国立国語研究所のHPには「『病院の言葉』を分かやすくする提案」が掲載されている。医療関係者にとってはなじみの言葉を、患者さんが理解するためにどう言い換えればよいか、具体例が載っている(索引)。例えば

  • 炎症...からだを守るために、からだの一部が熱を持ち、赤くはれたり痛んだりすること
  • うっ血...血液の流れが悪くなり、とどこおってしまうこと
  • ガイドライン 〔診療指針、標準治療〕...病気になった人に対する治療の実績や、学会での研究をふまえて作られた診療の目安
  • 膠原病...からだの中にあるものを敵と誤認して攻撃することによる炎症
  • ショック...血圧が下がり、生命の危険がある状態
  • プライマリーケア 〔総合的に診る医療〕...ふだんから近くにいて、どんな病気でもすぐに診てくれ、いつでも相談に乗ってくれる医師による医療

 一度目を通してみるといいだろう。小学生でもわかる言葉で専門用語を説明できることがよく分かる。

 余談だが、語学の勉強でも難しい言葉を分かりやすい言葉で表現することがある。英語や英会話の勉強で英英辞典を使う人は多いだろう。専門用語も、英英辞典で勉強したら、よくわかった。

服薬を助けるために分かりやすい伝え方で

 きちんと服薬してもらうためには、伝え方も重要だ。

 ディレグラは、食前の服用。でも、患者さんによっては、飲み忘れないように「食後」と伝えることもある。ビラノアは、空腹時服用だ。いくつか処方されていて、その中に飲む時間帯が特殊な薬がある場合には、ちゃんと理解してもらわなければならない。「空腹時とは、起床時や就寝時のことですよ」と。

 点鼻薬は、1日2回と薬袋に書いてある。それなのに、たくさん点鼻して鼻血を出す方がいる。

 目薬の袋に1日4回と書いてあるからと、同じタイミングで4回さしてしまう人もいる。

 だから、「朝、昼、夕方、寝る前の4回、さしてください」と伝える。そうすれば、誤解は防げる。

 抗菌薬でも、言い方の工夫ができる。飲みやすい方法を理解してもらえれば、コンプライアンスが上がる。メイアクトDSは、「ヤクルトで飲むと苦味が隠されますよ」とか、漢方が出たら、「砂糖と混ぜると飲みやすくなります」とか。専門用語でなく、患者さんの生活に近い例を入れてあげると理解されやすい。

 残薬管理には、服薬を継続するために必要な情報を分かりやすく伝える。忘れずに飲むことが、患者さんの健康に密接につながっていることを理解してもらう

 会話は一方通行ではない。相互のコミュニケーションが必要である。だから、患者さんの返答を見て、理解しているかを確認しよう。

 リアクションも重要だ。「えー!それが余っているなら、この薬はいらないのに......!」とか「副作用を抑えるために出ている薬だから、症状がないなら中止しましょうか」とか。印象に残るように伝える。

 薬の問題は、薬剤師の取る行動次第で解決する。患者さんに伝える言葉はその手段。たとえ専門用語を使わなくても、正しい服薬の方法や目的がちゃんと伝わることに意味がある。

第8回図1_190410.png

【福井繁雄氏プロフィール】

薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。

【研修会】

日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。
開催スケジュール:日本薬剤師研修センター受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)

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