薬剤師のための皮膚科処方箋/ステロイド外用薬の副作用を心配する患者への対応

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究所所長(監修)だんの皮フ科クリニック 段野 貴一郎

処方箋からわかることは...?

疾患

  • 強いかゆみを伴う高度の炎症性病変
  • 使用期間が1週間に限定されていることから、急性病変だと思われる(接触皮膚炎、貨幣状湿疹、急性痒疹、刺虫症など)

処方意図

  • 最も強いステロイドにより迅速に症状の改善をはかりたい

デルモベート® 軟膏0.05%の要点

薬剤:デルモベート® 軟膏0.05%

一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル

  • strongestランクのステロイド外用薬
  • 強力な抗炎症作用と止痒作用を発揮する
  • 重症の炎症性・アレルギー性皮膚疾患に用いられる
  • 長期連用による副作用に注意
  • [同ランク品] ダイアコート®、ジフラール®(デルモベート®と比べ、2剤は少し効果が劣る印象)

用法

  • 高度の急性病変に対しては、1日3回まで塗布するよう指示されることがある
  • デルモベート®の塗布量は1日10g以下が望ましい(ステロイド外用薬の副作用解説参照)

塗布部位

  • strongestランクは皮膚の薄い部位(顔面、頸部、陰部)には用いられない→ 上記の部位へ塗布の指示がある場合は、使用目的を疑義照会

その他のポイント

  • 最も強いステロイドなので使用期間を1週間に限定している

患者さんにこうやって伝えよう!

  • 炎症(皮膚炎)とかゆみを迅速に抑えます
  • 少量を指先に取り、患部にやさしく塗り込んでください
  • 塗った場所が白くなることがありますが、一時的な血管の収縮作用なので心配ありません
  • 塗る回数・塗る部位・使用期間は、必ず医師の指示に従ってください

Dr.Dannoのコレは覚えておきたい!

ステロイド外用薬の副作用

皮膚への副作用が一番の問題です。

  • 同じ部位に長期間塗布した場合に起こるとされています
  • ほとんどの副作用は投薬を中止すると症状が回復します(可逆的です)
  • 副作用は、ステロイドの強さ(ランク)に比例します
  • ただし、弱いステロイドだからといって安心はできません

皮膚への副作用とは:

  1. ステロイド皮膚症・・・皮膚萎縮、毛細血管拡張、紫斑、出血斑 皮膚の薄い部位(とくに顔面頬部)や、高齢者の前腕・手背への使用は要注意
  2. 皮膚感染症の誘発・悪化・・・毛包炎、ヘルペス、白癬、カンジダ症
  3. ステロイド痤瘡(にきび)・多毛

大量を長期間塗布しない限り、身体への(全身性の)副作用を心配する必要はなく、妊娠・授乳中の女性でも使用可能です。

副作用を心配する患者さんからのよくある質問

Q ステロイドは強い薬だと聞いています。身体に害はありませんか?

A ステロイド外用薬は身体に悪影響を及ぼす心配はありません。長い間使っていて心配でしたら、主治医(または、担当医)に不安を伝えてみてはいかがでしょうか。

  • 「 こんなに塗ったら身体に悪いのでは?」と心配されますが、塗り薬ではステロイドの飲み薬でみられるような全身性の副作用(副腎機能の低下、高血圧症、糖尿病、骨粗鬆症、免疫力の低下など)は、ほとんど起こりません。
  • 大量(およそ1日10g以上)を長期間塗布すると、軽度の副腎機能の低下が起こりうるとされていますが、可逆的であり、臨床上問題となるケースはありません。

Q ステロイドは塗りたくないのですが、他に方法はありませんか?

A ステロイドを使うべきかどうかは、症状の状況によります。

  • 必要な状況にも拘らず、ステロイドを嫌って使わないため、症状が治りにくくなっていることがあります。ステロイドを塗りたくないという人に、非ステロイド系外用薬が処方されることがありますが、中等症以上の病変には効果がありません。
  • 今なぜステロイドを塗る必要があるのか、他の方法はないのか、主治医に相談するよう勧めましょう。効果と副作用をよく聞き、納得したうえで治療を受けるのがよいことを伝えましょう。

前回の「ステロイド外用薬の塗布方法」はこちら

次回の「ステロイドと保湿剤の重層塗布」はこちら

[PharmaTribune 2012年7月号掲載]

監修者 ● 段野貴一郎 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
皮膚科からの患者さんに「このステロイドって強いの?体に悪くない?」と突然相談されて、答えに困ってしまったことはありませんか?ステロイド外用剤による治療は、薬の適切な使用がなにより大切。患者さんに尋ねられた時の薬剤師の対応が、その後の服薬コンプライアンスを左右するといっても過言ではありません。「皮膚科処方箋研究所」では、皮膚科処方箋の読み解き方と外用剤の服薬指導を経験豊富な皮膚科専門医がお教えします。
【略歴】
1975 年 京都大学医学部卒業
1977 年 カリフォルニア大学留学
1984 年 京都大学医学部皮膚科講師
1987 年 天理よろづ相談所病院皮膚科部長
1992 年 滋賀医科大学皮膚科准教授
2008 年 滋賀県栗東市にてだんの皮フ科クリニック」開院

皮膚科の薬剤をもっと学びたい人に・・・

ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方 改訂2版
著 段野貴一郎(だんの皮フ科クリニック)
B5判・148頁 定価(本体3,400円+税) ISBN978-4-7653-1569-2
http://www.kinpodo-pub.co.jp/shosai/e1811-1569-2.html

保湿剤、ステロイド、免疫抑制外用剤・・・さまざまな処方箋を例に、段野医師が処方意図の読み方と服薬指導のコツを解説します。処方鑑査のポイントや外用剤の製剤特性など、薬剤師であれば知っておきたい外用剤の基礎知識を、わかりやすく紹介。読んだ次の日から実践できる、即戦力の一冊です。

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