薬剤師のための皮膚科処方箋/腎透析患者の瘙痒治療

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究所所長(監修)
だんの皮フ科クリニック 段野 貴一郎

PT51_hifuka01.jpg
処方箋からわかることは...?

患者背景

人工透析を受けている

疾患

高度の透析皮膚瘙痒症(皮脂欠乏症を伴う)

処方意図

  • strongest~very strongランクのステロイドによって、耐えがたい痒みを抑えたい
  • 頑固な透析の痒みは保湿剤、抗ヒスタミン外用剤、ステロイド(中等度以下)ではよくならない
  • 広範囲なので、保湿剤と混合処方し、ステロイド塗布量を少なくしたい
PT51_hifuka02.jpg

ダイアコート®軟膏0.05%とヒルドイド®ソフト軟膏0.3%の要点

薬剤:ダイアコート®軟膏0.05%

  • 一般名:ジフロラゾン酢酸エステル
  • strongestランクのステロイド外用剤
  • [同等品]ジフラール®軟膏0.05%

薬剤:ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%

  • 保湿成分ヘパリノイドを含有する油中水型(W/O)乳剤性保湿剤

混合指示

  • 混合の割合は、期待すべき効果、塗布部位、年齢によって決まる
  • 混合の不適合がないかを鑑査

用法・用量

  • 塗布回数は症状の程度によって増減可
  • strongestランクのステロイドの1日塗布量は5~10gまでが好ましい

塗布部位

strongestランクの適応部位に準じる

患者さんにこうやって伝えよう!

  • 最も強いステロイドと保湿剤の混合です
  • 痒いところ全体に薄く延ばして塗ってください
  • 入浴後と朝に塗ってください
  • 強いステロイドが配合されていますので、指示された塗布回数・塗布部位・塗布期間を守ってください

Dr.Dannoのコレは覚えておきたい!

透析患者と痒み

透析患者さんには痒みを訴える方が多く、なかには一日中強い痒みに悩まされ、睡眠の妨げになるなど、QOLを著しく低下させる場合があります。患者さんの耐えがたい苦痛を取り除くためには、服薬指導だけでなく、生活指導も大切です。

痒みの原因

  • 痒み誘発物質(アレルゲンを含む)が産生され、メディエーター(ヒスタミンなど)を介して痒み受容器に作用する
  • 皮膚が乾燥して、痒みが増強する
  • ストレスも痒みの一因となる
  • 痒くて掻くと、ますます痒くなる悪循環が起きる

透析皮膚瘙痒症では、上記のすべての要因が重なって難治性となっています。加えて、中枢のオピオイド受容体を介して痒みが起きるとも考えられています。透析皮膚瘙痒改善経口薬のナルフラフィン塩酸塩(レミッチ®)は、オピオイドκ受容体に作用します

PT51_hihuka3.JPG
外用剤の選択基準
  • 湿疹などがない痒みには、保湿剤を使います
  • 保湿剤で十分効果を得られない場合は、抗ヒスタミン外用剤またはステロイド外用剤を使います
  • 湿疹・皮膚炎などがある痒みには、ステロイド外用剤を使います
生活指導/痒みとの付き合い方

皮膚の新陳代謝は夜間に行われるので、十分な睡眠が必要です

  • 規則正しい生活をする
  • 寝る前は目を休め、テレビやパソコンの使用を控える

痒いところを冷やしたり、つねると痒みが和らぎます

  • 冷やす場合は、冷たいタオルを当てたりします。ただし、氷など極端に冷たいものを直接皮膚にあてると、血管収縮したあとで再拡張した際に余計に痒くなる可能性があるといいます

"掻いてはダメです"と言われた患者さんは、余計ストレスがたまることがあります。傷ができにくい掻き方のアドバスをしましょう

  • 爪を立てずに、指を内側から外側に動かす(参照)
  • 孫の手にガーゼを巻くなどして、鋭利な物で掻かない
  • 肌着の上から掻く

ただし,皮膚炎などがある場合に掻くことは避けましょう。掻破することで,皮膚炎が広がります

PT51_hihuka4.JPG

前回の「ステロイドと油脂性保湿剤の混合処方」はこちら

次回の「白癬の処方箋」はこちら

[PharmaTribune 2013年3月号掲載]

監修者 ● 段野貴一郎 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
皮膚科からの患者さんに「このステロイドって強いの?体に悪くない?」と突然相談されて、答えに困ってしまったことはありませんか?ステロイド外用剤による治療は、薬の適切な使用がなにより大切。患者さんに尋ねられた時の薬剤師の対応が、その後の服薬コンプライアンスを左右するといっても過言ではありません。「皮膚科処方箋研究所」では、皮膚科処方箋の読み解き方と外用剤の服薬指導を経験豊富な皮膚科専門医がお教えします。
【略歴】
1975 年 京都大学医学部卒業
1977 年 カリフォルニア大学留学
1984 年 京都大学医学部皮膚科講師
1987 年 天理よろづ相談所病院皮膚科部長
1992 年 滋賀医科大学皮膚科准教授
2008 年 滋賀県栗東市にてだんの皮フ科クリニック」開院

皮膚科の薬剤をもっと学びたい人に・・・

ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方 改訂2版
著 段野貴一郎(だんの皮フ科クリニック)
B5判・148頁 定価(本体3,400円+税) ISBN978-4-7653-1569-2
http://www.kinpodo-pub.co.jp/shosai/e1811-1569-2.html

保湿剤、ステロイド、免疫抑制外用剤・・・さまざまな処方箋を例に、段野医師が処方意図の読み方と服薬指導のコツを解説します。処方鑑査のポイントや外用剤の製剤特性など、薬剤師であれば知っておきたい外用剤の基礎知識を、わかりやすく紹介。読んだ次の日から実践できる、即戦力の一冊です。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする