ハーボニー偽造品問題の核心はどこにあるか

飯島氏はかく語りき

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薬剤師なんて必要なのかと、存在意義が問われても仕方ない

 1月17日に奈良県の薬局チェーンでC型肝炎治療薬ハーボニーの偽造品が見つかった事件について、飯島氏は「あれは本当に深刻な問題だ」と語る。一般的には「医薬品流通の暗部が暴かれた」「(こういったものを買う)薬局のモラルが問われる」といった捉え方が目立ったが、同氏は「薬剤師が職責を果たせなかった痛恨の事態として考えるべきだ」と言うのだ。

 医師が処方した薬について、薬剤師が調剤し監査を行う。それを患者は服用するわけで、薬剤師は薬物療法の安全性を担保する最後の砦である。今回の事件では偽造品が患者まで渡ってしまったわけで、そこが全く機能しなかった。薬剤師なんて必要なのかと、存在意義が問われても仕方ないという。

薬剤師の職能団体としての責任が感じられない

 飯島氏は、薬局・薬剤師の質の担保は職能団体が責任を負わなければならないと考えている。日本薬剤師会の定例会見では、外箱や添付文書のない製品を非正規ルートで購入した調剤チェーンについて、「責任もなければ倫理観もない。信頼を一気に壊してしまった。同じ仲間と認めることすらおぞましい」との非難がなされたと報じられている。しかし、そこには薬剤師の職能団体としての責任が感じられないというのだ。

 今回の事件において、最終的に患者に薬を手渡したのは薬剤師であろう。一方、仕入れを担当したのはおそらくは調剤チェーンの本部であり、薬剤師が購入経路に口出しできるかと言えば疑問である。そういう構造の中で多くの薬剤師が働いていること。それでいて、専門職としての職責が問われること。飯島氏はその矛盾を指摘する。

薬剤師を護ることが職能団体の務め

 薬剤師が職責を果たそうとしたとき、それが利益追求を目指す企業の方針と矛盾したらどうするか。そのとき、薬剤師を護ることが職能団体の務めではないのか。先日、厚労省主導で日本薬剤師会、保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の3団体が招集されガイドライン策定の合意が行われた。「本来であれば職能団体が提言し自らを律する姿勢を見せるべきであり、嘆かわしい限りである」と飯島氏は述べている。

編注)5月18日、厚生労働省は、箱なし医薬品の販売禁止や、偽造品対策に関連した管理薬剤師の責務を明確化する方針を示した。
資料→http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000165330.html

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