【実践編】薬剤師のための健康行動科学/性格タイプ別アプローチ緑色タイプ(内向・直感型) 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室 岡田浩 連載の第7回は「周囲に気を遣う患者さん」に対しどうアプローチするかがテーマです。意識の方向は内向きで、判断する際には論理よりも感情を優先するタイプです。優しい雰囲気や周囲への気遣いが特徴なので、ナチュラルグリーンの「緑色」タイプと覚えてください。「緑色」タイプの患者さんは、薬局の待合室では静かに待っており、混みあってくると高齢の患者さんに席を譲ったりします。投薬の際にも、待合室に患者さんが多いと「今日は待っている人が多いから・・・」と遠慮して質問は控えたりします。また、泌尿器科系の病気などの答えにくい質問にも、言いにくそうにされることはあっても拒否せずに小声で教えてくれたりします。このような性格タイプの患者さんは、薬局ではいわゆる「いい患者さん」ですが、どのような点について配慮すべきなのかを解説します。 図 性格タイプの4つの色 ケース7 周囲に気を遣う患者さん 60歳代女性。経口糖尿病治療薬のメトグルコ®(250mg×6錠)に今回からネシーナ®(25mg×1錠)が追加処方された。過去の薬歴には「薬局でのGE変更了解取得済み」、コメントに「自分から質問されることはあまりないが、尋ねればお答えいただける」と記載あり。待合室ではいつも静かに待っている。 失敗例 NGワード、ピットフォール データや説明だけで投薬を終える → 個人的なことを全く尋ねられないと、冷淡だと感じるのがこのタイプの特徴です。穏やかな対応や、多少でも近況などを尋ねてみると良い関係が築けます。 早すぎるペース→ 患者さんが多く忙しいと、ついつい一方的にテキパキと服薬指導をしてしまいがちです。しかし「緑色」タイプの方は、薬剤師のテキパキした雰囲気をプレッシャーに感じていることも少なくありません。「緑色」タイプは、わからないことを率直に聞けないので、薬剤師は焦らず理解度を確かめながら説明することが必要となります。 では、どう対応すればいいの? 成功例 今回の患者さん・・・「緑色」タイプ(意識の向きは「内向」 思考の方向は「直感型」) 見分け方 薬歴には服薬指導の記録が比較的多く書かれています。例えば、GE変更について了解いただいたことや検査値の記載といった具合です。「緑色」タイプは、断ることが苦手な人が多く、薬剤師から質問されると断れずに答えてくれることが多いためです。しかし、無理をして答えていることも考えられるので、十分な配慮が必要です。 あなたが同じ「緑色」タイプであれば、このタイプの患者さんとのコミュニケーションにあまり難しさは感じませんし、隣の色である「黄色」「青色」も同様です。それは周囲に気を遣う「緑色」の特徴でもあります。しかし、もしあなたが「赤色」が強いタイプなら、「緑色」タイプはのんびりしていて少し頼りないと感じるかもしれません。 対応 (1)相手を気遣う態度 薬剤師が、薬についての客観的なデータや作用についての説明だけしか行わないと、冷たいと感じてしまうのが「緑色」タイプの特徴です。このタイプは、人間関係が意思決定に強く影響します。薬剤師の話が情報だけだと少し冷淡な印象を抱きがちで、良好な関係を築くことが難しくなることがあります。 このタイプの患者さんから信頼を得て、良好な関係を築くためには、「患者さんへ配慮を示すような質問」や、「患者さん自身の生活習慣に踏み込んだ具体的な説明」をすることが有効です。そうすることで、患者さんから親近感を持たれ、結果として信頼を得ることに繋がりやすくなります。「安心してお薬を飲めそうですか?」、「薬でわからないことがあれば、いつでも電話してください」と一言添えるなど、相手を気遣う態度が信頼されるカギとなります。 (2)理解を急かさず、説明には十分な時間をかける 「緑色」タイプの患者さんは、タイムプレッシャーに弱く、急かされると落ち着いて説明を聞くことができません。理解できていなくても、わからないと言えないことも多いので、患者さんの表情を確認しながらゆっくり投薬を進める必要があります。「赤色」タイプが強い薬剤師の場合、テキパキと説明を行う傾向がありますが、そのような態度が「緑色」タイプの患者さんにとってはプレッシャーになっている可能性もあります。 また、「緑色」タイプの薬局スタッフの場合も同様で、突然仕事を依頼して急がせるようなことをすると力を発揮できません。 (3)相手を理解するための質問をする このタイプの患者さんは、自分から質問することはあまりないので、時には質問を促したり、不満や不安がないかこちらから投げかける配慮も必要となります。投薬中に少なくとも1回は「ご不明な点はありませんか?」と声を掛けるなどの配慮が大切になります。 まとめ 「緑色」タイプは自ら不満を述べることが少ないために、薬局ではいわゆる「いい患者さん」と思われているかもしれません。しかし、不満や意見を表明することがあまりないため、実際には薬局に対してどう思っているのか、なかなかわからない患者さんでもあります。良好な関係を築くために、こちらから患者さんへの配慮を示す態度がこの色の患者さんには大変重要です。 おわりに シリーズの第4~7回で、4つの性格タイプすべてを解説しました。この性格タイプ4つには優劣はなく、グループ内にその4色の性格タイプすべてが必要だと言われています。おそらく皆さんの働く薬局内のスタッフでも、それぞれが4色のどれかの役割を果たしているはずです。自分のタイプを理解し、スタッフや患者さんの色を知ることでコミュニケーションを円滑にするための一助としていただければ何より幸いです。 参考文献 岡田浩. 3☆ファーマシストを目指せ!. 東京, じほう, 2013, p65-82.坂根直樹. 質問力でみがく保健指導. 東京, 中央法規, 2008, p61-69.坂根直樹. 説明力で差がつく保健指導. 東京, 中央法規, 2011, p112-124. [PharmaTribune 2015年11月号掲載] 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×