95歳の独居女性が自宅で転倒!④

あなたはどう考える? 薬剤師の在宅ケーススタディ vol.1

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

出題者から

有限会社フクチ薬局 福地 昌之さん

自宅での生活が困難になる可能性に備える

Kさんは要介護度3でほぼ外出せず、炊事や買い物などの身の回りのことはヘルパーさんに頼んでいます。状況を整理すると、Kさんが退院できたとして、その後の生活は自宅か施設かを、まず考えなければならないと思います。

Kさんはまだ退院しておらず、体の状態の詳細は把握できていませんが、実は入院前から年齢的なものと軽度の認知症により、物忘れや被害妄想を感じていました。深部静脈血栓によるむくみや歩行困難な状態も考え合わせると、個人的には自宅での介護は難しいのではないかと考えています。ただ、本人にどうしても自宅に戻りたいという強い意思があるなら、それに添うような支援を関係者で話し合っていかねばならないと思います。

自宅に戻ることを希望された場合、今までと同じぐらい体を動かすことが難しくなっている可能性があります。生活を維持していくためには、デイサービスやショートステイの利用も検討しながら、介護体制を強化することが考えられます。

それから、栄養バランスの見直し。高齢になるとフレイルやサルコペニアのリスクが高くなります。どちらも転倒や日常生活動作(ADL)の低下につながるので、予防としてきちんとした食生活が重要です。居宅を3階から1階に移す計画を立て、付き添いの下、散歩できるようにするのもよいでしょう。

転倒の防止として、薬の見直しやベッドに柵を設置することも考えられます。また、緊急時の対策に、本人がすぐに操作できるように枕元に緊急連絡ボタンを設置するのもいいかもしれません。それと、現在、多くの公共の場に自動体外式除細動器(AED)が設置されています。在宅支援関係者は操作方法を確認し、心肺蘇生術の研修も受けておく方がいいと思います。

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在宅アドバイザープロフィール

有限会社丸山薬局 大石 和美さん

父の介護がきっかけで在宅に本格的に関わる。自分も地域の一員であることを忘れず、その人の生き方を邪魔しないプロフェッショナルであろうと心がけている。在宅歴25年、月平均の在宅訪問件数約50件(算定はそのうち約半分)

プラス薬局高崎吉井店 小黒 佳代子さん

患者さんのもっと近くで薬剤師として働きたい、患者に寄り添いたいという思いから在宅を始める。在宅歴10年、月平均の在宅訪問件数約100件

メディスンショップ蘇我薬局 雜賀 匡史さん

在宅訪問を実施している薬局に就職し、医療だけにフォーカスを当てて患者に接するのではなく、生活の一部としての医療を考えることのできる薬剤師を目指している。在宅歴約10年、月平均の在宅訪問件数約80件

ファーマライズ株式会社 ひまわり薬局 佐藤 一生さん

モットーは「人は、在宅医療を通じて幸せになれる」。在宅歴11年、月平均の在宅訪問件数約40件(個人宅30件、施設10件)

有限会社フクチ薬局 佐藤 香さん

体調が悪化して来局できなくなった患者に会うために、薬を自宅に届けたことから、在宅の道へ。利用者、家族それぞれの生活とキャラクターを理解し、ニーズに合った医療の提供を心がけている。在宅歴9年、月平均の在宅訪問件数8件(個人宅7件、施設1件)

有限会社フクチ薬局 福地 昌之さん

在宅総合診療を行っていた医師からの依頼で、患者宅へ薬を届ける形で在宅をスタート。在宅では、いかに過ごしやすい日々を送れるかを重視して対応している。在宅歴23年、月平均の在宅訪問件数約35件

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