薬剤師のための漢方薬講座/月経関連症状と更年期障害-現代医学的な考察- 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 亀田総合病院 東洋医学診療科南澤 潔 氏 イラスト:吉泉ゆう子 月経が来ない、月経痛がつらい、イライラする...月経に対する悩みは幅広く、時として生活や仕事に深刻な影響を与えることもあります。さらに閉経前後では更年期症状へと悩みはつながります。体の「気」「血」「水」のバランスを整える漢方薬によるアプローチを見ていきましょう。 目次 現代医学的な考察 女性の月経周期をつかさどるホルモン 女性ホルモンの働き 東洋医学的な考察 女性の月経と深く関わっている「肝」 更年期症状は「腎」の働きの低下 ◎現代医学的な考察 ◆女性の月経周期をつかさどるホルモン 女性ならではの症状といってもさまざまですが、ここでは月経関連の症状である月経不順、月経困難症、月経前症候群(PMS)と更年期症状について考えていきます。 通常、第二次性徴を迎えた女性は一定の周期で月経を迎えます。視床下部-下垂体-卵巣が連関したホルモン周期により、子宮では内膜が刺激され増殖することで厚くなり、卵巣では卵胞が成熟して排卵が起こり、黄体が形成されます。妊娠(受精・着床)に至らなければ、やがて厚くなった子宮内膜が剝落・排出されて、月経を迎え、新たな周期に入ります。この月経→排卵→月経という一連のリズムに伴う女性の心身の周期的な変化をつかさどるもの。それは、視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、GnRH により下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、これらの司令を受けて主に卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)です。 ◆女性ホルモンの働き エストロゲンは月経周期の前半、特に排卵前の時期に多く分泌され、女性らしさをつかさどる作用を持つホルモンです。月経周期では、成熟し始めた卵胞から分泌されて、子宮内膜を増殖させるなど受精・着床の準備を整える役割を果たします。プロゲステロンは主に排卵後、成熟卵胞が変化した黄体から分泌され、体温を上げ(基礎体温が上がるのはこの作用による)、子宮内膜を維持し妊娠を継続させる作用とともに乳腺を刺激して出産後に備える役割を持ちます。妊娠が成立しないと、両ホルモンの分泌は大きく減少し、内膜が剝がれ落ちて月経血とともに排出されます。 ■月経不順 月経不順は、月経周期のどこかに問題が生じてホルモン分泌や排卵のリズムが狂ったり、止まってしまったりすることで起こります。強度のストレスなどの精神的影響や過度のダイエット、過剰な運動といったさまざまな原因が考えられます。特に異常が見つからない場合には、治療としてホルモン薬の投与で排卵を誘発し、月経周期の回復を待つ方法が一般的でしょうか。ホルモン分泌の低下だけでなく、分泌過剰が原因と考えられる多囊胞性卵巣症候群(PCOS)という病態も、月経不順の原因となります。 ■月経痛、月経困難症 月経痛は、剝落した子宮内膜を排出するために生じる子宮収縮痛を主とした機能性のものと、子宮腺筋症などの内膜症、子宮筋腫などによる器質性のものがあります。また、月経時には腹痛だけでなく他の身体症状や精神症状が現れることがしばしばあります。いずれも症状が強い場合にはADL低下をもたらすため、痛みに対してはNSAIDsが用いられ、場合によってはホルモン薬を投与します。 LEP(low dose estrogen-progestin)などのホルモン薬すなわち「低用量ピル」は、排卵を止めてプロゲステロンの分泌を抑えることによりプロスタグランジンの産生を抑え、痛みを緩和します。医師の指導の下で適切に用いられれば十分に安全性も高い治療法ですが、抵抗を感じる患者さんもいらっしゃるようです。なお、月経痛が過度に出現して日常生活に支障を来し、治療が必要となる場合を月経困難症といいます。 ■月経前症候群(PMS) 月経前症候群は、月経前3~10日の間続く頭痛、腰痛、むくみ、便秘、下痢などの身体症状や、イライラ、めまい、うつ、集中力低下のような精神症状で、月経開始とともに消失するものをいいます。原因としては、黄体期の後半のプロゲステロンとエストロゲンの急激な低下が考えられていますが、はっきり分かっていません。他に、ビタミンや血糖の変動の関与も指摘されています。 ■更年期症状 更年期症状は卵巣から分泌されるホルモン、主にエストロゲンの低下によって起こると考えられています。女性なら誰にでも起こる生理的な現象です。のぼせ(ホットフラッシュ)や動悸などの自律神経症状や精神症状、関節痛や浮腫などの身体症状まで症状は幅広く、現れ方に個人差が大きく、その理由もなぜ起こるのかも明確には分かっていません。 不快な症状が強いときや、早期に起こり骨粗鬆症が懸念されるときなどは、ホルモン補充療法(HRT)が行われますが、精神症状への効果は十分ではないようです。 次のページでは月経関連症状と更年期障害の東洋医学的な考察と、治療に使う漢方薬を学びます。 ◆執筆者◆ 南澤 潔 氏 医学博士日本東洋医学会 漢方専門医・指導医日本内科学会 総合内科専門医・指導医日本救急医学会 救急科専門医 【ご略歴】1991年 東北大学医学部 卒業1991年 武蔵野赤十字病院 研修医1993年 富山医科薬科大学(現 富山大学)和漢診療科1995年 諏訪中央病院 内科1996年 成田赤十字病院 内科1999年 麻生飯塚病院 漢方診療科2001年 富山大学 和漢診療科2006年 砺波総合病院 東洋医学科 部長2009年 亀田総合病院 東洋医学診療科 部長 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×