【在宅活動】スタッフ間で温度差がある。どうすればいい? 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 岡山県 匿名希望さんからのご相談 在宅活動をしたいが、スタッフ間で温度差がある。どうすればいい? 在宅活動(居宅療養管理指導,在宅患者訪問薬剤管理指導)をしたいと思っていますが、多忙な日常業務の中で、さらに仕事量が増えるなどの理由から薬局スタッフ(薬剤師、事務)の考えに差が生じ、体制が整いません。 Q1. アドバイザーの皆さんは、どのようにしてスタッフの理解を得ましたか? Q2. 在宅活動で外出する場合、残されたスタッフの業務量が増えると思うのですが、なにか工夫していますか?業務分担の方法で工夫があれば、具体的に教えてください。 現場を経験してもらう Q1 薬剤師の意識の差は仕方がないと思います。私は、まず現場に連れて行きます。薬局でもらっていた薬が、患者宅へ行くとどう整理され、どう服用されるか。目で見て感じることの重要性を実体験させます。私は実務実習中に、教育担当の医師から薬剤師のたまごの私たちに患者さんに病状を説明してみるように言われ、冷や汗をかいた覚えがあります。今の若手の薬剤師は、冷や汗をかく経験が極端に減っているように感じます。今のままではダメだと認識させるため、あえて現場に連れていくようにしています。 Q2 中部隊(薬局で調剤)、外部隊(在宅活動)と棲み分けしています。ローテーションする、仕事量を報酬に反映させる、などできるだけ不公平感をなくすような努力をしています。 「在宅通信」を発行して情報共有 Q1 私は、訪問専任薬剤師として勤務しているため、往診同行やカンファレンス、在宅関連の委員会の様子、現在の在宅業務の様子などを発信する「在宅通信」を毎月発行して情報共有をしていました。 Q2 他のスタッフは、外来調剤のみ、もしくは午前は外来調剤、午後は訪問(担当制)です。在宅業務は希望するスタッフが担当になっている場合が多いので、在宅は訪問スタッフが、外来は外来スタッフが頑張る、とお互いに考えていると思います。外来の混雑がひどいときには、訪問スタッフが外来を手伝うこともあります。役割分担しても、お互いの思いやりは大切だと思います。 在宅活動したいスタッフを見つける Q1 在宅活動に興味のない薬剤師もいると思いますし、色々な考え方があっていいと思います。ただ、今は在宅活動をしたくないと言っても通じるかもしれませんが、いずれは薬局薬剤師の必須業務になるかもしれません。もし相談者さんの薬局に、在宅活動に興味のあるスタッフが1人もいないようであれば、興味のある薬剤師の募集をかけてみてはいかがでしょうか。興味があっても、環境が整わないために一歩踏み出せないでいる薬剤師もいると思いますよ。 Q2 在宅活動で外出した場合に業務量が増えるのは、残されたスタッフだけではありません。実際に外出している薬剤師の業務量も増えます。お互い様なので、お互いが協力していくことがとても大切だと思います。誰か1人に業務が片寄らないように、どのスタッフでも同じように在宅活動を行える体制作りも大切です。 在宅活動の意味をスタッフ同士で話し合う Q1 私は経営者でもあるので、スタッフは皆、在宅活動をするのは仕方がないと思っているかもしれません。ついてこられないスタッフは辞めていきました。一時期、私と社長2人きりになったこともありました。私は、在宅活動がどうして必要なのか、いつもスタッフに説いてきました。2025年に団塊の世代が75歳以上となり、在宅で亡くなる高齢者が3倍以上にもなることが見えており、在宅活動をするかどうかは選択する余地もないのです。その現状を丁寧に説明し、薬局の役割をスタッフと共有していくしかないと思います。在宅活動は目的ではなく手段です。まずは、なぜ今、在宅活動に取り組んでゆかなければならないのか、スタッフ同士で話し合ってみてはどうでしょうか。 Q2 私の薬局では、薬局内で外来調剤を中心に行うスタッフと、在宅を中心に行うスタッフとに毎日分担しています。もちろん、どちらかしか行わないのではなく、手があいていれば互いに業務を手伝っています。すぐに問題点が共有できるように、毎朝、薬剤師、医療事務スタッフ全員でカンファレンスを行っています。在宅患者や施設患者のうち、その日の業務の中で最も優先されるべき患者の情報共有と、外来でのトピック(薬の不足やジェネリックの採用、ときにはヒヤリ・ハット事例)を伝え合って、外来も在宅もスムーズに業務が進むように工夫しています。 問答無用 Q1 「社是」です。問答無用です。不景気な世の中、仕事が増えるのは有難いことです。丁寧に話し合いを何度も重ね、患者さんの置かれている状況を説明しながら考えの差を埋めていくのが現実的でしょう。また、新たに「在宅もやりたい」という職員を雇う、という方法が最も理解が得られると思います。調剤/介護報酬が低い現状で、さらに採算の合わない在宅業務を開始するのは苦渋の決断となるかもしれませんが。看護師や介護職同様、薬局での在宅業務はマンパワーなしには成り立ちません。新たに業務展開をするのであれば、いっそう人手が必要です。 Q2 残されたスタッフの仕事量が増えるのは当たり前です。これまた、問答無用で請け負ってもらっています。店の中も大変だけど、在宅活動も大変ですから、お互い様です。とはいうものの、送り出す立場として、きちんと店を守るから安心して在宅に行ってきて、という心構えが必要です。事務と薬剤師の業務の分担は、在宅活動をするもしないも変わりません。新たに職員を雇う、効率よく業務を行うための機器を購入する(かえって機器の世話が大変になるかもしれないけど...)など、お金をかける方法があります。 周囲の負担が増えないように配慮 Q1 私は社長に直談判して在宅業務をやらせてもらっていますが、忙しいときに抜けるのは気が引けるものです。 Q2 最近、在宅業務の件数が増えて外出が多くなったので、他のスタッフの負担は増えていると思います。迷惑がかからないように時間調整したり、処方箋を自分で入力したり、なるべく自分1人で対応するようにしています。 在宅希望のスタッフが集まった薬局 Q1 新規開局の薬局だったので、スタッフには在宅活動の意志を確認していたようです。私自身は、会社からの「まずは在宅ができる人からはじめましょう」という呼びかけで在宅担当を希望しました。訪問に出ていない空いた時間は、薬局業務のサポートをしています。 Q2 スタッフ全員で声掛けし、仕事のペースを配分しています。 困っている患者さんのことを第一に考えて 「在宅活動をしたい」ということですが、なぜ在宅活動をしたいと思われたのでしょうか。世の中の流れが在宅に向いているから?将来のことを考えると?でしょうか。私は、患者さんあるいは利用者さんのことを優先的に考えていかねばいけないと思います。まず、点数はとれなくとも一度訪問してみてください。「何かをしてあげたい」という気持ちがわいて来ると思います。そうすると、自ずと、在宅活動に前向きではないスタッフを説得する方法を考えつくと思います。 在宅活動は、安易な気持ちで開始してしまうと大変なトラブルにつながると思います。業務が増える、仕事量が増す、これは当たり前のことで、覚悟がないとできないと思います。在宅活動はどういったことをやるのか、自分達できちんと認識した上で、患者さんの話を聞いてから始めるのでも遅くないと思います。自分達でできないとなれば、他を紹介あるいは辞退するというのも1つの手になるかもしれません。 患者さんのためにできることをする 今までの薬剤師は、薬だけを見ていて患者さんを見ていなかった気がします。薬局で薬を渡してしまえば、それで仕事が終わったような錯覚。患者さんは家に帰って、そこから薬を使い始め、日々いろいろなことが起きて困っているのに、薬剤師は知らない。在宅活動をすることに不満を持つような状況だと、薬剤師という職業自体がなくなってしまうかもしれないという危機感はたぶん持てないですね。患者さんのためにできることをする、という医療人として当たり前の意識を持たなければ、薬剤師に明日はないと思っています。 ちなみに、これはうちの薬局長の受け売りで、日々洗脳されております(笑)。その成果で、うちの薬局では薬剤師だけでなく事務職も含め、薬局という医療施設の仕事に携わる者としての自覚を全員が持って働いています。 体制を整えてから 薬剤師が自分のことを真っ先に考えている限り、薬剤師の医療人としての立場は、他の医療職から仲間はずれのままだと思います。自分が楽をして給料がもらえる仕事をしたいのか、医療人としてのやりがいを求めて仕事をしたいのか、これは価値観の相違なので埋めることは難しいと思います。在宅に参画して仕事が増え、スタッフの不満が増えるというのは、仕事の量というよりスタッフの質を考える必要があるのではないでしょうか。医療人としての意識を持って働いているのであれば、忙しくなった理由を理解してもらえると思います。それだけ患者さんに必要とされている薬局なのですから、むしろ喜ぶべきことだと思います。 とはいえ、残業代やスタッフ増員などの対応も考える必要はあると思います。そういった対応が経営者的に無理なら、中途半端に在宅に手を伸ばさず、できる体制を整えてから在宅に参入すべきです。患者さんや他の職種の方にも迷惑がかかってしまいます。 相談者から 貴重なご意見ありがとうございました。 皆様のアドバイスから、なによりも我々の業務の先には困っている患者さんがいることに改めて気づかされました。在宅業務に携わる覚悟、社内での情報共有も重要だとわかりました。事務スタッフも含めて、医療者としてこの状況を乗り切っていくチームの構築が必要ですね。そのチームが構築できたとき、「業務の増大」をよい意味でとらえ、対応していくことができるようになると思いました。 まずは、毎日の丁寧な話し合いから取り組みたいと思います。職員の多くが腑に落ちるまでは少し時間を要するかもしれませんが、長い目で見て、頑張ります。どうもありがとうございました。 [PharmaTribune 2014年9月号掲載] 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×