【在宅活動】薬剤師のグリーフケア

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

2年前から在宅活動をしています。

質問1. ターミナルの患者さんを見送った後,気持ちを持ち直すのが難しいことがあります。患者さんが亡くなった後、「あの時に別の言葉をかけていたら...」「もっと何かできたのではないか...」など悶々と自問自答してしまいます。みなさんは,自分自身のメンタルケアやメンタルコントロールをどのようにされていますか?

質問2. 残されたご家族との関わりについても悩んでいます。ご家族の希望を確認した上で、一周忌などに伺ったり、お花をお送りすることもあるのですが、このような関わり方がよいのか...。みなさんは残されたご家族とどのように関わっていますか?教えてください。

神奈川県 薬局薬剤師 ペンネーム たっぴぃさんからの質問

質問1 自分自身のメンタルケア

1人で抱え込まない

患者さんを見送るというのは何回経験しても慣れませんし、慣れなくていいことだと思っています。ただ、いつまでもひきずって、他の患者さんのケアに迷惑をかけてはいけないので前向きに切り替えるようにしています。

それと、自分1人で抱え込まずに、薬局内で話すことでお互いのメンタルコントロールもできるように思います。グリーフケアについては薬剤師ももっと勉強していかないとですね。

チームや職場、家族とも共有する

考えてしまって眠れない日もありましたが、チームや職場で分かち合いながら、前を向くようにしています。その方への思いは、次の目の前の患者さんに向けるように心がけています。

亡くなってから訪問してご家族とお話をしたり、生前のふっくらとしたお写真をみたり、思い出を共有することも癒しにもなります。

学んだことを次に活かす

初めのうちは、なかなか立ち直れず悶々と考え込んでしまって自分を責めたりすることもありました。でもくよくよ考えているうちに、「ミスしたり動けなくなったら今対応している患者さんたちに申し訳ない」「患者さんたちは闘病生活を通して私たちに何かを教えてくださっている」「それを最大限自分で学んでまた次の患者さんに活かしていこう」と思うようになってから、少し尾をひかないようになりました。「もっとこうすればよかった」と思う気持ちをポジティブにとらえ「次にはそうしよう!」と自分に活を入れて、次はもっといいケアを、と思う毎日です。

常に全力で関わる

ある医師から「亡くなったときには勿論自問自答することもあるけれど、私たちは医療従事者なのだから、一緒に悲しむだけではいけないのではないか」と言われたことがあります。とは言っても、患者さんご本人やご家族とのつながりもあり、不十分だったことを悔い、悲しくなることもあります。だからこそ、常に全力で関わる努力をしようと思っています。

「もっと何かできたのではないか」「違う方法があったのではないか」という思いは反省としてしっかり胸に刻み付けて、その次の患者さんに活かせるよう、心掛けています。

日頃からの心構え

ターミナルの方を担当することがあまりないのですが、安定していた方が突然入院してそのまま亡くなってしまうケースにはよく遭遇します。ほとんどが高齢の方ですので、どんなに元気に見えても、いつ急変するかわからない、といつも考えながら接しています。

ですので、もちろん悲しいですが、引きずっていつまでも落ち込み過ぎるようなことはありません。いつ遭遇しても後悔のないように、誠実に向き合い、日々、最善を尽くすように努力しています。この仕事を続けている限り、人との別れは避けられません。いつでも冷静に対応できるよう、日ごろから死を意識しておくことも大切なのかな、と思っています。

質問2 残された家族との関わり

落ち着いた頃に、お線香を持って

亡くなられて落ち着かれた頃に、お線香を持って訪問しています。そのときに残金や薬を回収します。一周忌などに伺ったりすることはありませんが、近くに行ったときに立ち寄ったりしたことはあります。私の顔を見て、故人を思い出して泣き出されたこともありますが、自然体で良いのではないでしょうか?

ご家族はそれまでと違う生活をスタートし、時間をかけながら、それが日常となっていきます。私たちは在宅療養という限られた時間の中でご家族と関わっているに過ぎません。患者さんとの思い出を糧に、関わった医療者が前進するように、ご家族も前に進んでいっていると思います。

後日、お花を持って

私たちの薬局では、在宅患者さんが亡くなられた場合、後日訪問し、お花を持ってお参りと、余っていた薬の回収をしています。特に、麻薬がある場合は必ず訪問をします。

落ち着いた頃に、手ぶらで

ご自宅で過ごされた場合には、葬儀も終わり少し落ち着かれたころ(1 ~2週間後くらい)に連絡をしてご了解いただければお参りに伺います。麻薬を使用している場合は、葬儀などで人の出入りが多くなる前にできるだけ早く伺います。

当薬局ではお花やお香典は持たず、お参りだけしています。お参りに伺った際に「お薬の処分などをしましょうか?」と声をかけています。施設の場合、ご遺体はご自宅に帰られますが、ご自宅までお参りすることはしていません。施設には、残った薬を回収処分に伺います。

亡くなった直後や葬儀後に、手ぶらで

亡くなったあと、ご家族に連絡をとって訪問します。訪問時は手ぶらです。私1人だけのときもあれば、医師と、看護師と、チームで、などメンバーはその時々です。訪問のタイミングも、亡くなった直後、葬儀後など様々です。薬剤の回収をしたり、未収金をいただいたり。葬儀に参加することはありませんが、個人的に弔電を送ることはあります。薬局の隣に葬儀場がありますので、そこで葬儀をされる場合に少し挨拶したりします。

最初の頃は、いつ電話しよう、未収金どうしよう...など、どう動いてよいのかもわからず、苦労した覚えがあります。看護師さんやケアマネさんから「お薬もらってきたよ」と連絡を頂くことがあり、お薬って捨てられないものだと改めて気づきました。それから躊躇せず訪問できるようになりました。

臨機応変に対応

まずはお電話にて対応します。麻薬の回収は早い方がいいか、落ち着いてからがいいかはご家族によって希望が分かれますので各々対応しています。回収に伺った際に「お線香をあげてもいいですか」などと声掛けすることもありますが、ご家族も忙しく大変そうですので臨機応変に対応しています。

それぞれに合わせた対応

ケースバイケースだと思います。親密な関係であれば、一周忌などで訪問して喜ばれることもあるでしょうが、逆に気を遣わせてしまう場合もあると思います。訪問する薬剤師は必ずこうしている、というようなものはないと思います。薬剤師としてではなく、人としてどのような対応をするのかを考えると良いのではないでしょうか。

相談者から

皆さまがどのような思いを抱きながら、患者さんに接しているのかが分かりました。

人の最期の時に関わることは、医療に携わる者として様々なことを考えさせられます。

ある患者さんから亡くなる直前に投げかけられた言葉が今も残っています。「薬が効いていると薬剤師が自信を持って言ってほしい。嘘でも確信がなくてもいい。今までの服薬が無駄ではないと安心できることがどれほど死の間際に大切かを知ってほしい。同じ思いを持つ人の支えになってほしい」

...限られた時間の中に無駄はなかったと確信したいとのことでした。きちんとした自分の理念や解釈などが整理されていなければ、自分自身を追いつめてしまう人が出てくるかもしれません。今回の相談は、私自身だけでなく、他の薬局スタッフが最期のときが迫っている方への在宅医療に対応する際にどのような心構えを持つべきか悩んだことから相談させていただきました。大切なのは皆で共有したりして個人の考えを整理した上で臨むことだと感じました。皆で意見交換してみます。

[PharmaTribune 2015年2月号掲載]

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