在宅活動を始めた、もしくは関心があるのだけれど、いざ実践となると、「唐突なハプニングに対応できる自信がない」という初心者の方もいるのでは。これから毎月、実際の活動で起こりえる落とし穴(ピットフォール)を事例に挙げ、その対応方法、解決策を探っていきます。 Case3 薬剤師の役割が見えなくなってきました お薬を持って訪問しても、窓口と同じように薬の説明をするだけ。病状、身体状況を確認しようとすると「医者が診てくれているからいい」と言われてしまう。報告書で改善点を提案しても、受け入れてもらえないどころか、読んでもらえていないのかもしれない。そんな状況で在宅活動を続けているうちに、なんだか薬剤師の役割が分からなくなってきました......。 <div style=" border: 1px dashed #ddd; padding: 15px; background: #d5e3ff; font-weight: bold; margin: 20px 10px;">在宅活動歴 5年 在宅業務は薬局窓口業務の延長 在宅でできていないと気が付いたことは、薬局窓口でもできていないかもしれません。在宅だから特別何かをしようと考えるのではなく、普段の薬剤師業務に意識して取り組むことが、充実した在宅業務につながると思います。 報告書は読んでもらえないこともあります。文書だけではなく電話や、直接会いに行くなど、いろいろな方法でアプローチすると、連携するメンバーの対応が変わってくるかもしれません。 <div style=" border: 1px dashed #ddd; padding: 15px; background: #d5e3ff; font-weight: bold; margin: 20px 10px;">在宅活動歴 7年 調剤とは、薬物療法の経過や結果を医師や患者に伝達することまで含む そもそもの薬剤師としてのご自身の業務を振り返ってみるといいと思います。調剤指針では、調剤の概念は以下のように示されています。 <div style="border: 1px dashed #ffd990; padding: 5px; background: #fff3dc; margin: 20px 10px;"> 「調剤の概念とは、薬剤師が専門性を活かして、診断に基づいて指示された薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施することをいう。また、患者に薬剤を交付した後も、その後の経過の観察や結果の確認を行い、薬物療法の評価と問題を把握し、医師や患者にその内容を伝達することまでを含む。(調剤指針 第13 改訂)」 特に理解されにくい薬剤師のフィジカルアセスメントですが、薬物療法の効果を確認して評価する上で必要な手段です。しかし、血圧測定などが在宅活動の主目的になってしまうと患者さんにも他職種にも受け入れてもらえないと思います。「薬の効果や副作用を確認するために、お身体の調子を確認させていただきます」と患者さんにお伝えし、根気よく続けるのが良いでしょう。 <div style=" border: 1px dashed #ddd; padding: 15px; background: #d5e3ff; font-weight: bold; margin: 20px 10px;">在宅活動歴 13年 あきらめずに続けてみましょう うまくいかないときもあります。在宅チームや患者さん、ご家族の全ての人とすぐに打ち解けられるわけでもありません。でも在宅活動は、1回きりの勝負ではありません。あきらめずに誠意を持って続けていくうちに、受け入れていただけることもあります。 患者さんが薬剤師によるフィジカルアセスメントを拒否する場合、ケアマネジャーや他職種から情報をもらったり様子を聞いたりすることでアセスメントをし、副作用が出ていないかなどを判断します。 報告書の提案通りにならないのはチームの方の考えがあってのことも 私の薬局では、報告書に返信欄を設けて発信していますが、送り先によっては返事が来ないので、読まれていないのかなと思うことがよくありました。しかし一昨年、報告書の送り先にアンケートやインタビューを実施したところ、ほとんどの方が読んでいることが分かりました。連携を続けるうちに返信も増えてきました。 処方や褥瘡などの処置に関する改善点、報告書に提案を書いても変わらないことはよくありますが、変えない理由を直接尋ねてみるというのも1つの方法です。チームの皆さんの考えを理解するきっかけになります。忙しくて、単純に忘れてしまっていた、なんてこともたまにはあるようですが、アンケートではどの職種からも"薬剤師からの報告書は有益である"との評価をいただき、自信がつきました。 安定しているから服薬指導の内容が変わらないことも 患者さんの状態が安定していて、薬も変わらない、調子も良いという状況が続く中では、服薬指導の内容も単調で、薬を配達しているだけのような気分になるかもしれません。しかし、入院することなく在宅療養を続けられるということは、意味のあることです。患者を支えるチームの一員として評価できることだと思うようにしています。 <div style=" border: 1px dashed #ddd; padding: 15px; background: #d5e3ff; font-weight: bold; margin: 20px 10px;">在宅活動歴 21年 患者さんを多方面から「みて」いくうちに薬剤師の役割が見えてくる 薬剤師の役割について悩まれているようですが、在宅においては3つの関わり方がヒントになるのでないでしょうか。 "薬"に関して剤形、調剤方法、管理方法を考えて薬を安全かつきちんと服用してもらう"患者さん"に関して薬が効いているか? 効いていないのか? 副作用は出ていないか? を患者さんの状態をみて評価する"多職種&薬薬連携"知りえた情報を医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、病院薬剤師と共有し合う 薬だけにとどまらず、患者さんの状態、生活環境、立ち振る舞い、言動、家族、家庭環境などあらゆる面を「みて」いくと、おのずと薬剤師の役割が見えてくるのではないでしょうか。 「みる」という言葉には見る・看る・診る・視る・鑑る・観る等、多くの意味があります。これらのどれも、在宅の場で薬剤師が支援できることです。