サル痘の臨床像とコロナに関するオマケ 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする © Adobe Stock ※画像はイメージです 研究の背景:臨床像の把握には記述疫学が最強 本稿はサル痘についてだ。あと、最後にちょっとオマケで、われわれのコロナ研究を紹介する。後者ははっきり言って「小ネタ」で、学術的にはほとんど価値はないが、世間で話題になったPCR検査をめぐる「スンナ派、シーヤ派論争」の種明かしくらいにはなっていると思う。興味のある方は、どうぞ。 本稿執筆時点で、サル痘が話題になっている。欧州など20の国で感染が認められ、感染拡大が懸念されているからだ。世界保健機関(WHO)も迅速な対応が重要だと表明している。 Roy M, Farge E. Monkeypox can be contained if we act now, WHO says. Reuters [Internet]. 2022 May 27 [cited 2022 May 28] サル痘ウイルスはポックスウイルスの一種で、天然痘ウイルス同様、オルソポックスウイルスに属する。サル痘、monkeypoxというのはミスノマー(誤称)で、げっ歯類など多彩な哺乳動物に感染する。ヒトにも感染することが70年代から知られているが、コンゴのクレード(系統群)で致死率は1〜10%、西アフリカのクレードでも3%以下と、30%程度の天然痘に比べると致死率は低い。死亡例は小児かHIV感染者が多い。ヒト-ヒト感染が起きることは知られているが、家庭内感染でも二次感染率は8%程度と、それほど感染しやすいウイルスではない。 サル痘のヒト感染について、治療を吟味した臨床試験や観察研究は存在しない。動物実験レベルでtecovirimatとbrincidofovirが検証されているくらいである。両者は、米国では天然痘バイオテロ対策のために承認されている。 tecovirimatは経口薬で、エンベロープ蛋白の機能阻害効果があり、オルソポックスウイルス全般に効果がある。brincidofovirはcidofovirのプロドラッグで、経口薬だ。体内でcidofovirに変じる。cidofovirはヌクレオシド・アナログで、海外では従来サイトメガロウイルス感染症などのウイルス感染症に使われてきた。 白状すると、僕自身、サル痘の臨床経験はない。2003年に米国でプレーリードッグ由来のアウトブレイクが起き騒動になったとき、当時ニューヨーク市で感染症フェローだった僕は慌てて「お勉強」したことは覚えている。アウトブレイクはインディアナ州など複数の州で見られたが、幸か不幸かニューヨークでの感染者は発生しなかった。 臨床像を勉強したいとき、パワフルなのは記述疫学だ。記述疫学は、ただ目の前の現象、あるいは過去に起きた現象を記述するだけで、精密な統計解析はないか、ほとんどない。もっとも、昨今はその精密な統計解析も統計ソフトがやってくれているわけで、必ずしも解析的な疫学研究の方がより高度な知性を要しているとは言い難いのだけど。 それはともかく。研究方法は研究目的から逆算して得られる。「どんな病気」か知りたいときには記述疫学に限る。ただ調べて書いただけ。そんなシンプルかつパワフルな研究が感染症のトップジャーナル、Lancet Infectious Diseasesに掲載された。今回紹介するのはそれである。 Adler H, Gould S, Hine P, Snell LB, Wong W, Houlihan CF, et al. Clinical features and management of human monkeypox: a retrospective observational study in the UK. The Lancet Infectious Diseases [Internet]. 2022 May 24 [cited 2022 May 28];0(0). 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×