ユニバーサル・マスキングの効果は?

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

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© Adobe Stock ※画像はイメージです

研究の背景:マスク施策の廃止校区と継続校区でコロナ発症率を比較

 僕はある場面では「マスクはいらない」と言い、別の場面では「マスクは必要」と言って、マスク必要派も、マスク不要派も等しく怒らせてきた。そして、こんなことを書くと「主張が首尾一貫していない」と、さらに別の人の怒りを買う。

 怒られてるのは僕だけだと思っていたら、どうも海外でも同様のことが起きているらしい。マスク着用については「イエスか、ノーか、はっきりしろ」とすごまれるわけだが、状況によってそのニーズは変化するので、「イエス、ノー」では当然語れない。しかし、一般市民はイエスかノーかの二択のメッセージを求めるわけで、専門家泣かせなのである。そんなことが、NEJMのポッドキャストで語られていた。興味のある方はどうぞ。

 さて、今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するマスクの効果を吟味した研究を紹介する。

Cowger TL, Murray EJ, Clarke J, Bassett MT, Ojikutu BO, Sánchez SM, et al. Lifting Universal Masking in Schools - Covid-19 Incidence among Students and Staff. N Engl J Med. 2022 Nov 24; 387(21): 1935-1946.

 Difference-in-differences analysis(差分の差分法)という、医学畑ではやや耳慣れない分析法を使っている。この論文はNEJMに載ったものだが、お急ぎの方のために同誌は簡単なビデオサマリーもつくっている(便利な時代ですね)から、QUICK TAKEをクリックすると見ることができる。こちらもどうぞ。

 本稿執筆時点で、米国では110万人以上の方がCOVID-19で命を落としている。凄まじい被害である。

Worldometers:COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMIC

 そのため2022年9月の時点で、26万5,000人の小児や青少年が親などの自分を世話してくれる人を失ったという。学校の教職員が足りなくなったり、休校に追い込まれるなど、彼らの教育機会も甚大な被害を被った。ここが特に米国らしいのだが、被害は黒人やラテン系などの有色人種(非白人)に多い。

 コロナ対策にはさまざまな施策が組み込まれてきたが、その1つがユニバーサル・マスキングだ。米国でこの施策を採用したのが、18の州とワシントンDCだ。マサチューセッツ州もこれに含まれるが、米疾病対策センター(CDC)の勧告を受けてマサチューセッツ州初等・中等教育省(DESE)は、2022年2月28日、州におけるマスク施策を廃止した。しかし、ボストン大都市圏にある2つの校区、ボストンと隣にあるチェルシーでは、同年6月までマスク施策を継続していた。両施策の違いを吟味したのが、今回の研究なのである。

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