研究の背景:人工甘味料は生活習慣病の発症リスクを上昇させる、では生殖機能にも影響を与えるのか? 砂糖入り清涼飲料水の過剰投与は、糖尿病をはじめとする生活習慣病の発症リスクを上昇させ、男女双方の不妊症リスクを上昇させることは周知の事実である。一方、人工甘味料は低カロリー(カロリーゼロ)で血糖値に影響しないにもかかわらず、過剰摂取は耐糖能異常を招くという報告がなされている。人工甘味料が健康に与える影響については議論の余地があり、生殖機能においても例外ではない。 人工甘味料とは? 代表的な人工甘味料として、アスパルテームやアセスルファムカリウム、スクラロースといったものがある。 アスパルテームはアスパラギン酸とフェニルアラニンの2種類のアミノ酸を用いて製造されるアミノ酸系甘味料であり、1g当たりのエネルギーは砂糖と同じ4kcalであるが、甘味度は砂糖の200倍ある。そのため、少量でも砂糖に比べて甘味が強いため、アスパルテームは摂取カロリーの削減や摂取後の血糖値上昇を抑制する効果が期待され、砂糖の代替品としてダイエット飲料、減糖タイプの清涼飲料水や菓子に使用されている。 人工甘味料の糖代謝への悪影響 米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓協会(AHA)は、砂糖の代替品としての人工甘味料使用は肥満や糖尿病の予防、治療に有用な可能性があるとする一方、人工甘味料が糖代謝に及ぼす影響についてはいまだ十分に判明していないとの見解を示している(Diabetes Care 2012; 35: 1798-808)。 実際、人工甘味料入りダイエット飲料の摂取が糖尿病発症リスクを高めることが報告されている。その理由として、人工甘味料は血糖値やインスリン分泌への直接的な影響はないものの、味覚刺激や腸内細菌叢の変化を介して糖代謝に影響を及ぼすと考えられている。 生殖機能への影響についても、早産や妊孕性低下との関連が報告されていることから、今回は人工甘味料が生殖機能に与える影響について概説した論文を紹介したい。 Yang-Ching Chen, et al. Aspartame Consumption, Mitochondrial Disorder-Induced Impaired Ovarian Function, and Infertility Risk.(Int J Mol Sci 2022; 23: 12740)