病名に希望をそえて処方する

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

「え、僕、精神分裂病なんですか」

 病棟の診察室で患者さんが声をあげた。『統合失調症』に今は変わったが、当時は『精神分裂病』という病名を使っていた。窓がなく、壁はコンクリート。机がひとつにイスが2つ3つしかない小さな診察室に患者さんと2人きりだった。そのせいもあって声だけでなく、気持ちが伝わってきた。驚き、悲しみ、怒り、絶望。患者さんは黙り込んでしまった。

胡桃澤 伸(くるみざわ・しん)

精神科医・劇作家

1966年、長野県生まれ。95年から神戸大学精神神経科での勤務を開始。その後、大阪、東京、千葉の病院に勤務。専門は統合失調症、外傷性精神障害。劇作家として「くるみざわしん」の筆名で関西を中心に上演を続けている。「同郷同年」が「日本の劇」戯曲賞2016と第25回OMS戯曲賞大賞、「忠臣蔵・破 エートス/死」が2019年文化庁芸術祭新人賞を受賞。共著に『中井久夫講演録 統合失調症の過去・現在・未来』、近著に『くるみざわしん 精神医療連作戯曲 精神病院つばき荘/ひなの砦 ほか3篇』(いずれもラグーナ出版)がある。

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