糖尿病薬のリーグ戦、「優勝」した薬剤は? 臓器保護効果についてのネットワークメタ解析 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:糖尿病治療薬の選択において臓器保護効果が注目されている 2006年に初版が発表された米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)の薬物療法アルゴリズムにおいては、長らく糖尿病と診断すると同時にメトホルミンの投与が推奨され、メトホルミンは不動の第一選択薬であった(Diabetes Care 2006; 29: 1963-1972、Diabetes Care 2009; 32: 193-203、Diabetes Care 2012; 35: 1364-1379、Diabetes Care 2015; 38: 140-149、Diabetes Care 2018; 41: 2669-2701)。 しかし、2022年版において、ついにメトホルミンは必ずしも第一選択薬ではなくなり、①臓器保護効果(心血管疾患、心不全、慢性腎臓病)を主たる治療目的に据える場合にはSGLT2阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬が推奨され、②血糖管理を主たる治療目的に据える場合にはメトホルミンあるいは血糖改善作用の強い薬剤との併用療法が推奨され、③体重管理を主たる治療目的に据える場合には、一部のGLP-1受容体作動薬やGLP-1/GIP受容体作動薬が効果の強い薬剤として筆頭で記載されるようになった(Diabetes Care 2022; 45: 2753-2786)。 こうしたアルゴリズムの変化は、糖尿病の治療は何を目的に行うものなのか、という概念の変化を反映したものであるといえる。わが国においては、糖尿病の治療とは、①血糖・血圧・脂質・体重・喫煙状況の適正化(喫煙については禁煙であるが)を通じ、②三大合併症や動脈硬化症を予防し、もって③健常者と変わらない生命予後とQOLを糖尿病患者にもたらすことであるとされてきた(『糖尿病治療ガイド1999』;最近では、がん・認知症・サルコペニア、さらにはスティグマにも目を向ける必要性が付記されるようになっている)。 確かに血糖値を改善しても、かえって合併症が増えるようでは糖尿病治療とはいえない。その意味では、日本糖尿病学会が2型糖尿病の薬物療法アルゴリズムを最初に発表したのは2022年であり、ADA/EASD薬物療法アルゴリズムの初版から16年遅れていたわけではあるが(糖尿病 2022; 65: 419-434、糖尿病 2023; 66: 715-733)、糖尿病治療とは何かという点では、20年以上先んじて臓器保護効果の重要性に目を向けていたともいえるであろう。 そのような中、韓国・ソウル国立大学のグループが、これまでの糖尿病治療薬についての心血管アウトカム試験(CVOT)に関するネットワークメタ解析を行い、さまざまなアウトカムに対してベストな糖尿病治療薬は何かについて検討した(Diabetes Obes Metab 2023; 25: 3560-3577)。今後の糖尿病治療薬の選択において参考になるものと考えご紹介したい。 なお、ネットワークメタ解析とは、例えばAという薬剤とプラセボ(または特定の対照薬)との比較試験の結果が示されており、別にBという薬剤とプラセボ(または特定の対照薬)との比較試験の結果が示されている場合、プラセボ(または特定の対照薬)を基準にすることによって、A薬とB薬を比較する統計解析法だと私は理解している(BMC Med Res Methodol 2010; 10: 54)。この解析方法を用いた今回の研究では、実際には存在しないほぼ全ての糖尿病治療薬による「リーグ戦」が成立し、対戦成績が「リーグ表」として提示されている。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×