待ちに待った関節リウマチの総説(セミナー)がLancet(2023 Nov 25; 402: 2019-2033)に出ました。 トップジャーナルの最近の関節リウマチの総説にはJAMA(2018 Oct2; 320: 1360-1372)があり、小生この数年、関節リウマチの治療はほぼ全面的にこの総説に頼ってきました(関連リンク1)。 この時から早5年の歳月が経過し、いったいどんな進歩があったんだろうと、わくわくしながら読みました。 Lancet(2023 Nov 25; 402: 2019-2033)関節リウマチ総説、最重要点は下記11点です。 時間のない方は、この11点のみの「怒濤の反復」をしてください。 発症3カ月以内は「the window of opportunity」であり即座にDMARDs開始! JAK阻害薬(商品名オルミエント、ゼルヤンツ)は化学合成。心血管イベントとがんリスクあり。RA第二選択に降格 初期MTX+PSLはMTX+bDMARDsに非劣性、bridging therapyという。3カ月で漸減 発症にHLA-DRB1 gene重要、喫煙はRA発症の最強因子、抗CCP抗体↑は重症化 RAの診断クライテリアはない。あるのは分類クライテリア! ACR/EULARのRA分類クライテリア 治療:MTX+ステロイド3~6カ月→b/tsDMARDs 3~6カ月→使い回し。MTX併用で薬抗体↓ 寛解6カ月で薬漸減は再燃リスク高く継続を。再開で9割有効。エコー/MRI炎症感度高い 治療はT2T(treat to target)定め3カ月でSDAI・CDAI 50%、6カ月で寛解・低活動に 手指、手関節が最も侵され対称性に。こわばり(>30分)は骨間筋の腱周囲炎かも 「difficult-to-treat rheumatoid arthritis」はPIRRA(炎症+)とNIRRA(-)がある 自己抗体(+)でTNFα阻害薬、オレンシア、リツキサンが有効 今回の総説で特に重要なポイントが3つあります。 最も重要なのは関節リウマチ(RA)治療には「絶対お得、期間限定セール」のような「the window of opportunity(機会の窓)」(発症から3カ月以内)が存在し、RAを疑ったら即座にDMARDs(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs:抗リウマチ薬)を開始することです。決して「様子を見ましょう」でNSAIDs(鎮痛薬)でだらだら過ごしてはなりません。なんとしてもDMARDsで3カ月から6カ月以内に寛解に持ち込まないと予後は圧倒的に悪くなるのです。 この総説の2番目の話題はJAK阻害薬の行方です。 2018年の時点では経口JAK阻害薬(オルミエント、バリシチニブ)+メトトレキサート(MTX、リウマトレックス)はバイオ製剤(TNFα阻害薬など)+MTXと遜色がないとのことで、いよいよ関節リウマチは経口製剤だけで治療する時代に入ったのだなあ、と期待が大いに高まりました。 しかし今回のLancet総説によると2022年のORAL Surveillance(N Engl J Med 2022; 386: 316-326)のRCT(randomized control trial)でJAK阻害薬(ゼルヤンツ)は意外にも心血管イベントのhazard ratio 1.33(95%CI 0.91~1.94)、がんのhazard ratio1.48(95%CI 0.91~1.94)で、残念ながら第二選択に後退してしまいました。Hazard ratio1.33とはリスクが33%高まるという意味です。 ACR(American College of Rheumatology)ではJAK阻害薬は抗TNFαが失敗しリスク評価をした後でのみの使用と随分厳しくなりました。 3番目の重要なポイントは初期にMTX(リウマトレックス)+ステロイド併用が有用なことです。 EULAR(European Alliance of Association for Rheumatology)では特に最初の3カ月に「bridging therapy(橋渡し治療)」としてPSL(プレドニゾロン)を使います。なんとcsDMARDs(リウマトレックスなど)+PSLはMTX+biological DMARDs(TNFα阻害薬など)と遜色がないのです。PSLの量はコンセンサスがありませんがACRは10mg以下、EULARは最大30mgほどのようです。 ただしステロイドは原則「bridging therapy」であって、3カ月で急速に減らしていきます。それ以上の期間は推奨しません。なおACRではPSLは推奨していません。