糖尿病には最悪!「小さく産んで大きく育てる」 古い時代の推奨は見直す必要がある 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:私の耳に残る「小さく産んで大きく育てよう」 1970年に生まれた私の幼少期には、子供は「小さく産んで大きく育てる」のが良いといわれていた。確かに妊産婦死亡が大きな問題となっていたころには出産時の出血を避けるべく、小さく産むことが推奨されていてもおかしくはない(厚生労働省「我が国の妊産婦死亡の年次推移」)。 そして実際に、低出生体重児(出生時体重2,500g未満)の割合は1975年を底値(5.1%または4.6%)として、2010年ごろ(9.6%または8.4%)までは定常的に増え続けていたようである(厚生労働省「出生時体重2,500g未満の出生割合の推移」。 しかしその後、オランダ飢饉(1944年のナチスドイツによるオランダ西部封鎖によりもたらされた飢饉)の時期に妊娠中だった母親から生まれた児では、その前年や後年に妊娠中だった母親から生まれた児に比べ、肥満・糖尿病発症率や死亡率が高くなっていた現象が知られるにつれ(Eur J Epidemiol 2005; 20: 673-676)、小さく産むことが児に及ぼす悪影響が問題視されるようになった。 DOHaD(Developmental Origin of Health and Disease;Int J Environ Res Public Health 2023; 20: 6297)あるいはBarker仮説(Diabetologia 1992; 35: 595-601)と呼ばれる、胎児期の低栄養が出生後の児の健康や疾病に影響を与えるという概念は、エピジェネティクス(DNAの遺伝子配列ではなく、DNAに対するメチル化やヒストンアセチル化などにより遺伝子産物の発現が制御されるという現象)で説明されるようになっている。 このたび、出生時の低体重(2,500g以下)のみならず、出生後に大きく育つ(20歳児のBMI 25以上)ことにより、ハザード比(HR)で示される2型糖尿病の発症リスクが10倍近く上昇していることが欧州糖尿病学会(EASD)の機関誌に発表された(Diabetologia 2024; 67: 874-884)。古い時代(妊産婦死亡が高率の時代)の推奨は、常に時代に合わせて見直し、改定していく必要があることを示す典型例としてご紹介したい。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×