精神科受診までの待機期間短縮の「治療効果」 2024年度診療報酬改定に寄せて 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:再来患者でいっぱいの精神科外来、待たされる初診患者 精神科界隈でも、今年度(2024年度)の診療報酬改定が話題になっている。 特に影響が大きいのは、通院精神療法の点数が減らされたことである。例えば、指定医で30分未満の場合、330点から315点に減点となる。同時に、減った分を取り返せる「早期診療体制充実加算」(15点)が新設されたものの、この基準が非常に厳しく、時間外診療や精神科救急医療への貢献や、初診患者の割合が高いことなどが条件となっており、条件を満たす精神科医療機関は、現状では少ないと思われる。 このような診療報酬改定が行われた背景には、言うまでもなく、現在の精神科外来診療の問題点がある。 多くのクリニックは、再来患者でいっぱいであり、初診患者をほとんど診ないクリニックも少なくない。初診で診てもらうには、数週間待ちとなっており、特に児童思春期精神科のような専門医が少ない領域では何カ月、あるいは1年以上という話もよく聞く。 実は、順天堂大学順天堂医院メンタルクリニックでは、筆者が着任したころは、初診を予約なしで何人でも診療していた。しかしこうなると、1日に10人を超える初診患者が殺到し、その中には精神科救急相当の患者も含まれているため、現場は混沌状態であった。このスタイルで一定の診療の質を維持することは難しく、スタッフの負荷も限界を超えていたため、やむなく予約制を取り入れることにした。そもそも他の大学病院は、元々ほとんどが予約制であり、筆者が以前勤めていた東京大学病院でも、「近くの順天堂ならすぐ診てもらえますよ」と案内していたことを覚えている。 そんなわけで当院も、一般初診の予約待ちは2週間程度で、専門外来の場合はより長い待機時間を要してしまっているのが現状であるが、このように待機期間が長くなるとどのような問題が起きるのだろうか。 このような問題には「エビデンス」はないと思っていたが、日本と同様、メンタルヘルスケアへのアクセスに時間がかかることで知られている英国において、心理療法までの待機期間が与える健康と経済面への影響について調べた研究が存在した(Nature Mental Health 2023; 1: 667-678)。昨年発表された論文だが、診療報酬改定の話題に寄せて紹介したい。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×