入院を要するインフルエンザにゾフルーザは有効か

メタ解析のクリティーク

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

(© Adobe Stock ※画像はイメージです)

 バロキサビル マルボキシル(BXM、商品名ゾフルーザ)は、インフルエンザの治療薬だ。キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるBXMは、従来のノイラミニダーゼ阻害薬〔オセルタミビル(商品名タミフル)など〕とは異なる機序でインフルエンザウイルスに作用する。外来患者の症状改善を促すことが複数のランダム化比較試験(RCT)で示されている。しかし、そのRCTを用いたメタ解析では、BXM投与群の症状改善までの時間は、オセルタミビル群と有意な違いはなかった(−1.29時間、95%CI −6.80〜4.21時間)。

Kuo Y-C, Lai C-C, Wang Y-H, Chen C-H, Wang C-Y. Clinical efficacy and safety of baloxavir marboxil in the treatment of influenza: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Microbiol Immunol Infect 2021; 54: 865-875.

 さて、BXMの入院患者に対する効果についてはエビデンスが十分ではなかった。最近、BXMの入院患者への効果を吟味した後ろ向き研究が2つ発表された。これを受けて、この2つの論文を加えたシステマチックレビューおよびメタ解析が発表された。

Shiraishi C, Kato H, Hagihara M, Asai N, Iwamoto T, Mikamo H. Comparison of clinical efficacy and safety of baloxavir marboxil versus oseltamivir as the treatment for influenza virus infections: A systematic review and meta-analysis. J Infect Chemother 2024; 30: 242-249.

 要するに、従来の知見に加え、「入院を要するインフルエンザ患者に対するBXMの効果はどうよ?」を吟味した論文なのである。比較対照はオセルタミビルだ。これを今回はクリティークする。

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

岩田氏

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

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