GLP-1受容体作動薬がパーキンソン病治療薬に?!

benefitとharmに迫る<1>

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

〔山田悟氏から〕本稿を脱稿した後、セマグルチドの有害事象についての論文を相次いで読むこととなった。1つはセマグルチド使用患者における虚血性視神経症に関する報告であり(JAMA Ophthalmol 2024年7月3日オンライン版)、もう1つは骨折リスクの上昇に関する報告である(EClinicalMedicine 2024; 72: 102624)。どの薬剤でもそうであるが、benefitのみならずharmについても継続して注視していくべきである。編集部の要請により、前者についての考察をまとめたので、本稿と併せてお読みいただきたい(編集部注:山田悟氏のDoctor's Eyeは毎月20日の公開ですが、今月は25日にも虚血性視神経症についての考察を掲載します)。

研究の背景:アルゴリズム上の立ち位置を上げるSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬

 最近まで、日本糖尿病学会は2型糖尿病に対する治療薬の使い方の順番については明確な序列を付けず、せいぜい経口薬を優先しつつ、インスリン抵抗性を改善するのか、インスリン分泌を改善するのかでどの薬剤を選択するかを判断すべきと記すのみであった(『糖尿病治療ガイド』2022-2023、p59)。

 しかし、2022年に糖尿病治療に関する薬物療法アルゴリズムが日本で初めて作成され(糖尿病 2022; 65: 419-434)、2023年には改訂されており(糖尿病 2023; 66: 715-533)、肥満者ではビグアナイド薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬が、非肥満者ではDPP-4阻害薬、ビグアナイド薬、αグルコシダーゼ阻害薬がトップ3の薬剤に挙げられている(関連記事「緊急解説!糖尿病薬物療法アルゴリズム」「2型糖尿病の薬物療法アルゴリズムが改訂」)。

 このアルゴリズムで注目されるのは、additional benefitsのある薬剤〔慢性腎臓病(CKD)、心不全、心血管疾患に対するメリットを期待できる薬剤〕としてSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の2剤が挙げられていることである。

 米国糖尿病学会/欧州糖尿病学会のアルゴリズム(Diabetes Care 2022; 45: 2753-2786)や米国臨床内分泌学会のコンセンサスステートメント(Endocr Pract 2023; 29: 305-340)では既に、糖尿病治療の目的として合併症予防を中心に考える場合(Cardiorenal Risk ReductionまたはComplications-Centric Algorithm)と血糖・体重管理を中心に考える場合(Glycemic and Weight ManagementまたはGlucose-Centric Algorithm)で分け、それぞれに異なるアルゴリズムが記載されている。そして、いずれも前者においてはSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が第一選択薬として挙げられている。

 その意味では近い将来、日本糖尿病学会においてもadditional benefitが格上げされ、「合併症予防を治療目標とする場合」などとして、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が第一選択薬に立ち位置を上げてくる可能性がある。

 考えてみればSGLT2阻害薬については、一部の薬剤に限定されてはいるものの、(1型糖尿病)、CKD、心不全の保険適用を取っている。すなわち、2型糖尿病の有無に限らずその治療効果(臓器保護効果)が認証されているという状況であり、SGLT2阻害薬の多面的な効果は誰しもが認めるところである。

 そんな中、GLP-1受容体作動薬リキシセナチドに早期パーキンソン病の進展予防効果を認める研究結果がN Engl J Med(2024; 390: 1176-1185)に掲載された。GLP-1受容体作動薬の多面的効果について考える機会と思い、ご紹介したい。

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