肺MAC症を診断しよう、使える!MAC抗体

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研究の背景:急増する肺MAC症、認知度低いMAC抗体

 肺非結核性抗酸菌(NTM)症の1つである肺Mycobacterium avium complex(MAC)症は急増している。現在、全国の医療機関で調査が行われているが、過去の記録を大幅に更新することが予想される。本稿執筆時点では10万人当たり20人近くに上ると予想されており、特に中高年女性や気管支拡張症がある患者では注意が必要である。

 肺MAC症の診断は喀痰検査がゴールドスタンダードであるが、現在保険収載されている抗体として抗GPL-core IgA抗体(通称MAC抗体)と呼ばれるものがある。非常に臨床で有用であるが、残念ながら呼吸器専門医以外にはあまり広まっていない。

 MAC抗体のよいところは、結核菌には糖脂質抗原〔Glycopeptidolipid(GPL)〕がないということである。インターフェロンγ遊離試験(IGRA;T-SPOT.TBやクォンティフェロン)と合わせると、効率的に肺NTM症の診断が可能な時代となっている。

 メタ解析では、肺MAC症を疑った場合のMAC抗体価は、カットオフ値0.7U/mLで感度 69.6%、特異度 90.6%で診断可能とされており(Sci Rep 2016; 6: 29325)、実臨床でも0.7U/mLのカットオフ値をよく使っている。

 今回紹介するのは、気管支拡張症のレジストリに登録された患者におけるMAC抗体価を検討した研究である(Chest 2024年10月25日オンライン版)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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