「世界で安全な薬」をいつまで危険にしておくのか

5年ぶりに動いた「日本のロモソズマブ」

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 今年(2024年)は、5年間かたくなに動かなった「日本のロモソズマブ(商品名:イベニティ)」の心血管リスク対策に動きがあった年だった。年末に当たって、直近の動向にも触れつつ振り返ってみる。

海外では心血管疾患の既往患者を禁忌に

 言うまでもなく、「日本のロモソズマブ」は「海外のロモソズマブ」とは明確に異なっている。前者は発売後5年が経過しても重篤な主要有害心血管イベント(MACE;心筋梗塞や脳卒中)や死亡例を出し続けているのに対し、後者は発売当初からそれが適切に予防されている(関連記事「"反面教師"認定された日本の添付文書」)。

 そもそもの発端は、開発本国である欧米ではMACEのために承認が見送られていたにもかかわらず、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)がこれをなんの根拠もないままに世界に先駆けて見切り発車で薬事承認し、アムジェン・アステラス社が2019年3月に販売を開始したことである。結果、直後から死亡を含むMACEが多発したのは周知の通りである(関連記事「イベニティ最終報告、発売半年で死亡16例」)。

 2020年に私は、米国骨代謝学会(ASBMR)の日本代表(Ambassador)の立場から同学会の機関誌に緊急寄稿して、心血管疾患の既往患者を禁忌にすべきと世界に警鐘を鳴らし(J Bone Miner Res 2020; 35: 994-995)、これを受けて薬害オンブズパースン会議も警告を発信した。

 翌2021年には、米食品医薬品局(FDA)が全世界から市販後副作用報告を集めたデータベースであるFDA Adverse Event Reporting System(FAERS)の解析結果を報告し(J Clin Med 2021; 10: 1660)、➀ MACEの報告はほとんどが日本からであり、欧米と違って高齢者や男性などの心血管リスクが高い患者に多く処方されている、➁ その原因は日本の添付文書では心血管疾患の既往を禁忌としていないからである、➂これに対してFDAや欧州医薬品庁(EMA)の添付文書では、心血管疾患の既往患者を禁忌としているためMACEは適切に予防されている―と明記した。

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