【2025年医学はこうなる】大磯義一郎

日本医療安全学会理事長/浜松医科大学教授

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【私が選んだ医学2024年の3大ニュース】

1.医薬品供給体制崩壊

 2024年5月22日付の厚生労働省「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 報告書」によると、2020年の小林化工が製造販売する抗真菌薬に睡眠誘導薬が混入した事案を契機に、2024年4月までに21の企業に対して、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)違反による業務停止、業務改善などの行政処分が行われた。これに伴い、違反企業の製品について出荷停止処分が行われた結果、現在の医薬品供給体制の崩壊が生じたとされている。

 診療科にもよるだろうが、筆者の感覚的には2~3年前から、ちらほらと日常的に処方している薬剤が欠品のため別の薬剤に変更してくれとの連絡が来るようになり、最近ではもはやそれが当たり前になってきている。

 同報告書では、対策として①製造管理・品質管理体制の確保、②安定供給能力の確保、③持続可能な産業構造―を掲げ、「ある程度大規模での生産・品質管理体制の構築も有効な選択肢。企業間の連携・協力や役割分担、コンソーシアムや企業統合などを検討」と示されている。しかし、同報告書にも懸念点として書かれている通り、独占禁止法に定めるカルテルに該当しうる(報告書の内容を素直に読むとカルテルを推奨しているようにも読める)ものであり、ここでも医療界(統制経済)とその他業界(資本主義、自由経済)の衝突の問題が起きている。

 ともあれ、当たったことのない医療費予測(関連記事「実は歳出の2%!『財政難の戦犯は医療費』に疑問」)に基づく医療費削減を繰り返した結果、国民の生命・健康を守れなくなってきた一事象と考える。

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