夜間当直、上級医の一喝に武者震い

JA秋田厚生連平鹿総合病院の初期研修

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編集部から
研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」を始めます。国家試験に合格したばかりの先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。

宮地 貴士(みやち たかし)

所属:秋田大学医学部附属病院(内科専攻医)
研修先:JA秋田厚生連平鹿総合病院(2022年4月〜24年3月)

宮地 貴士(みやち たかし)

選択肢は自分で考える

 研修先を決める際に重視したのは、研修医に与えられる裁量の大きさと指導医との距離の近さでした。病院見学に訪れた際、研修医が主治医となり病棟からのさまざまな電話に四苦八苦しながら対応している姿を見て、「ここなら鍛えられるな」と感じました。

 自分が初めて病棟から受けたコールは血便でした。国家試験では問題文の後に必ず選択肢があります。しかし、実際の臨床では血便という今起きている問題だけが目の前にあり、経過、検査所見、身体所見などの情報を収集した上で、自分で方針を考えなければいけません。もちろん、一刻を争う事態では素早く情報を整理し、上級医に相談することが大切です。それに加え、研修期間では「自分で考え、自分から相談し、自分でやってみる」という自発的な行動をどれだけ多く体験できるかが大事だと思います。

 個々のケースに対するふとした疑問を指導医にぶつけることができる環境も重要です。多忙な指導医への相談は非常に気を使います。よほど緊急でなければPHS端末などでの相談ははばかられ、相談できないまま流れてしまうこともあるかもしれません。

 自分の研修先は医局が1つであり、研修医も指導医に混じって自分の座席が与えられていました。そのため、コーヒーを入れている時やラウンジでご飯を温めている時に、他科の先生も交えて雑談のような気軽さで相談ができました。救急外来で対応した症例、他科にコンサルトした症例などの経過について先生方から医局でフィードバックいただけたのは大変勉強になりました。

写真1. 地域で開催された盆踊りの様子

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同期の研修医らと参加する宮地貴士氏(中央)

今も忘れない言葉

 2年間の研修期間で忘れられないのは、自分が初めてお看取りを担当し、死亡診断書を作成した際に指導医から頂いた言葉です。「死亡診断書は患者さんにとって人生最後の公式文書になります。その思いをもって先生の名前を明記してください」――内科医となった今も、どれほど深夜の対応でも死亡診断書を作成する際はこの言葉を思い出し、故人の命に対する畏敬の念を忘れないようにしています。

 自分の研修先は研修医の裁量が非常に大きかったと思います。その分忙しく、最近の働き方改革と逆行する部分もあったかもしれません。例えば、循環器内科は休日夜間も完全主治医制であり、研修医も主治医として対応する必要があります。バックアップの上級医はいますが、研修2年目からは22時以降の救急当直は基本的に一人で行うため、救急の初期対応や入院/帰宅などを自分で判断しなければならない機会が増えます。

 「医療圏の人口9万人ほどの命をその夜は君が預かっているのだ」と上級医に一喝された時は武者震いしました。患者さんのお看取りや病状説明など、一人での当直は緊張の連続ですが、勉強するモチベーションになりました。

図. 循環器内科研修時の1日の主な流れ

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食事は600円で盛り放題!

 病院の最上階がレストランになっており、横手盆地を一望しながら食事ができました。最近は物価高の影響で価格が上昇傾向にありますが、ランチは600円ほど。ご飯とみそ汁は自由に盛り付けられるためとても満足感があります。

 地方ならではの特徴として、開業医の先生方との距離感がとても近いことが挙げられます。納涼会や忘年会など、地元の医師会の先生たちと親睦を深める機会が年2回ほどありました。紹介状でしかやり取りのなかった先生方のお人柄を知ることができ、また開業医ができること、できないことなどについてお酒の席では本音で教えていただき、とても貴重な経験となりました。

写真2. 鳥海山での冬スキー

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納涼会で親睦を深めた開業医の先生らと楽しむ宮地貴士氏(右から2人目)

 初期研修を終えてからは皆自分の専門領域を極めていくため、これから研修を始める医学生の皆さんには、研修中にさまざまな診療科の考え方や働き方を思う存分吸収してもらえたらと思います。

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