クリニック・病院経営におけるブランディング

医療機関におけるブランディングの重要性とポイントとは

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

多くの医療機関が日々の診療に注力する一方で、自院のブランディングに積極的に取り組む事例はまだ限られています。しかし、医療機関におけるブランディングは、患者様からの信頼を深めるだけでなく、専門性のアピールや地域医療への貢献度を高めるための重要な手法といえます。今回は、クリニックや病院向けにさまざまな経営支援を行う株式会社Co-Buyの長瀬顕生氏をお招きし、医療機関がブランディングを通じてどのように価値を発信し、地域での存在感を高められるか、その具体的な方法とポイントについて伺いました。

長瀬 顕生(ながせ けんしょう)

株式会社Co-Buy 専務取締役

長年、医療機器ディーラーとして医療材料・器械・システムの販売、クリニック開業、病院移転新築計画等の業務に従事。2019年に株式会社Co-Buy専務取締役に就任。 各種セミナーでは診療報酬改定、医療DX、開業支援、などのテーマにて登壇。業種・規模を問わずブランディングを通しての経営安定化、患者様の安心感を提供できる施策、パッケージを提供するため日々、新しい協業企業と出会い、自身も含めブラッシュアップをしている。

株式会社Co-Buy 専務取締役 長瀬 顕生

ブランディングが生み出すイメージ効果とは

まず、「ブランディング」とは何かについてお話しいたします。簡潔に申し上げますと、医療機関様の特徴を外部に伝えること、さらには信頼性や親和性を向上させる活動全般を指します。これらの活動を総称して「ブランディング」と表現しております。たとえば、医療機関の名称、ロゴ、デザインなどもブランディングの一環といえます。

具体例を挙げますと、耳鼻咽喉科で「親子のゾウをモチーフにしたロゴ」が採用されている場合、そのロゴを見るだけで「耳や鼻を診てくれるクリニック」であり「子どもも診てもらえる」といったイメージが患者様に伝わります。また、朝6時から診療を行う内科が「おはよう内科クリニック」といった名称を掲げることで、周囲の方々に「朝早くから診てくれる」と認識してもらえるでしょう。

さらに、専門領域を持つ医療機関であれば、専門性や得意とする治療分野を明確に打ち出すことが重要です。これにより、医療機関の知名度や信頼性が向上し、患者様や他の医療機関からの紹介が増える可能性があります。つまり、ブランディングの本質は、特徴を言語化・可視化することにあるといえます。

ブランディングのターゲットと手法

ここからは、先ほどお伝えした内容を踏まえ、「ブランディングのターゲットと手法」について具体的にご説明いたしますが、ターゲットによって適切な手法が大きく異なってきます。

たとえば、「増収を図りたい」という目的においても、新規患者をターゲットとするのか、既存患者をターゲットとするのかによって、実施すべき施策や手法が大きく変わります。オーバーに言えば、デジタルかアナログかというほど、方向性が異なる場合もございます。

新規患者の場合

新規患者の獲得を目指す場合は、ホームページやSNSといったインターネット上の情報発信が有効です。また、近隣の医療機関への情報発信も重要で、これらを通じて広く認知を広げることが可能となります。

既存患者の場合

一方、既存患者やそのご家族への情報発信では、クリニック内のデジタルサイネージや掲示物、チラシやリーフレットなど、紙媒体の活用が効果的です。患者様が実際に目にする機会が多く、帰宅後に再確認できる点が利点です。

どちらの場合でも、情報発信の対象が誰であるかを明確にしたうえで、適切な手段を選択すること、そしてちゃんと伝えたい情報が伝達され「訴求」されることが肝要です。

また、情報発信の際に積極的にデータの二次利用を行っていくという観点も重要です。たとえば、ホームページ用に作成したデータを印刷してチラシとして活用する、あるいはチラシ用に作成したデータをPDF形式でホームページ上で公開するなど、一つのデータを複数の場面で活用することで、コストの削減と効率化が図れます。

医療広告規制に関する注意点

次に、情報発信を行う際に注意すべき点として、医療法に基づく「病院等の広告規制」についてご説明いたします。この規制は、厚生労働省が2018年より発表しているもので、年々内容がブラッシュアップされています。

対象となる媒体には以下が含まれます。

  • ホームページやSNSなどのインターネット上の情報
  • テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの広告
  • ポスターや看板、チラシ、パンフレットなどの掲示物

これらが広告規制の対象となる条件は主に以下の2点です

誘導性:患者の受診を誘導する意図があること
特定性:医療機関や担当医の名称が特定可能であること

上記2つを満たす情報は「医療広告」と見なされ、規制の対象となります。万が一、規制に違反した場合、保健所による調査や表示の中止命令、さらには行政処分が科される可能性があります。

よくあるNG例としては、以下のような表現が挙げられます。

  • 「内視鏡検査数県内1位」や「オペ件数ナンバーワン」など、他の医療機関と比較した主張
  • 「満足度調査1位」といった信憑性が確認できない表現
  • 皮膚科や美容整形領域でのビフォーアフターの写真を使用し、誰でもその結果が得られるかのような印象を与える内容
  • 著名人が利用している旨の記載
  • 「絶対安全な手術」といった、現実にはあり得ない表現

また、自由診療での「20%オフ」など、費用に関する過度な強調も注意が必要です。自由診療を提供している医療機関では、これらの表現が抵触する可能性がありますので、特に注意が必要です。

さらに、「県内初導入」などの表現についても、適切な情報更新が行われていない場合には信頼性に疑問を抱かれ兼ねません。例えば、最新情報であるかのように見せながら、実際の情報が3年前のものだった場合、患者様に誤解を与えるリスクがございます。こうした広告規制に関する表現方法について、十分ご留意いただければと思います。

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