承継開業断念理由TOP3をズバッと解決!

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昨今、クリニック開業にあたり、新規開業と並行して承継開業をご検討される先生が増えています。一方で、承継開業を断念される先生も多くいらっしゃるのが実情です。今回は、医療コンサルタントとして数多くの組織開発を手がけており、医師からアドバイスを求められることも多い、株式会社AMI&I代表取締役の溝口博重氏に、クリニック継承を断念する理由TOP3と、その解決策になり得る考え方について伺いました。

ゲスト:株式会社AMI&I 溝口様
お話を伺った方
株式会社AMI&I 代表取締役
溝口 博重(みぞぐち ひろしげ)氏

「日本の10年後の医療・ヘルスケアを変革する」をミッションに、全国の医療機関の人材採用・組織マネジメントを中心とした経営支援を実施。NPO法人 医桜の代表理事として「日本の医療の質の向上」に取り組まれるなど、"医師のよき相談相手"として多方面にて活躍中。
https://ami-i.jp/

クリニック継承が困難となる主な理由①:テナント問題

―今回は、クリニック継承が成立しない主な理由を3つご紹介し、それぞれの課題に切り込んでいきたいと考えております。

まず、継承が成立しない要因の一つとしてよくあるのが「テナント問題」になります。多くのクリニックは、長年にわたり同じ場所で診療を続けており、結果としてテナントの老朽化が進行しています。

収益性や患者数には問題がなくとも、建物自体の老朽化により契約に至らないケースが少なくないのですが、どのような対応が考えられるでしょうか?

溝口様 まず、テナントの老朽化そのものが問題になるかどうかを再考する必要があります。例えば、リノベーションを施せば大幅な改善が可能です。壁材の塗り替えや内装のリフォームを行うだけでも、建物の印象は大きく変わります。

 もちろん、コンクリート構造の柱が動かせない場合など、大規模な改修が必要なケースもありますが、多くの場合、レイアウトの変更や外装のリニューアルによって問題を解決できます。費用が発生する点は避けられませんが、開業後の初期投資と考えれば、十分に検討に値する選択肢です。

―なるほど。リノベーションで対応できるケースも多いということですね。一方で、場合によっては移転を検討することも必要かと思います。移転に関して、患者様の心理的な影響を考慮すると、どの程度の距離であれば許容範囲となるのでしょうか?

 一般的には、500メートル以内が望ましく、1キロメートルを超えると患者様の流出リスクが高まります。

―確かに、500メートル以内の適切なテナントをすぐに見つけるのは難しいかもしれませんね。その場合、まずは現状のクリニックを引き継ぎ、適切なタイミングで移転を検討するという手段も考えられるのではないでしょうか。

 その通りです。例えば、地方では駐車場が併設されているクリニックも多いため、駐車場の一角に新たな建物を建設し、旧施設を解体して駐車場にする、という形での移転も可能です。

―買い手の先生方は、どうしても目の前のテナントの状態に目を向けがちですが、本来の目的は診療の継続と経営の安定ですよね。長期的な視点でクリニック運営を考えた場合、多少の投資は必要不可欠と言えそうです。

 新規開業の場合、通常は半年間ほど赤字覚悟で運営しなければなりませんが、既存のクリニックを継承する場合、初月から黒字経営が可能となるケースが多いです。そのため、短期的なコスト増を懸念するのではなく、中長期的な視点でリノベーションや移転を検討すべきでしょう。

―クリニック経営者としての視点を持つことが、円滑な継承において重要ということですね。

 そうですね。既存の資産を活かしながら、最適な形でクリニックの継承を進めていただければと思います。

―クリニック継承に限らず、新規開業においても、古いテナントを利用するケースがあるかと思います。そういった場合の対応策はありますか?

 私としては、まず「交渉を積極的に行うべき」という点を強調したいですね。例えば、「外観工事を施してほしい」「内装を改善してほしい」「トイレの改修をしてほしい」など、条件を提示した上で交渉することが重要です。

 オーナー側にとっても、長期的な賃貸契約を結べる医療機関は魅力的な存在です。そのため、一定の条件を飲むことで契約が成立するケースは少なくありません。

―なるほど。古い建物だからといって諦めるのではなく、交渉を前提に検討すべきということですね。

 特に医療機関はテナントとしての価値が高く、オーナーも積極的に対応してくれることが多いです。ただし、交渉においては一方的な要求を押し通すのではなく、「双方の落としどころを探る」ことが大切です。

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