連絡船の運航も医療のうち!地域医療を実感

三豊総合病院の初期研修

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編集部から
研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」。国家試験に合格したばかりの先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。

遠藤 通意 (えんどう みちおき)

所属:兵庫県立淡路医療センター外科
研修先:三豊総合病院(2022年4月〜24年3月)

遠藤 通意 (えんどう みちおき)

外勤の救急医の一喝で意識変革

 初期研修先を選んだ決め手は「地元とは異なる地域で研修したい」という思いでした。

 地元茨城県で大学卒業まで過ごしていたため、他の地域で長期間暮らした経験はありませんでした。しかし、初期研修医制度の魅力の1つは全国どこででも研修できることであり、「医療の基本は共通しており、研修先ごとの学びの差はきっとそれほど大きくない。だからこそ、地域を基準に選ぶこと自体が研修の面白さになるはずだ」と考え、異郷香川県での研修を選択しました。

 また「自分に合っているのは少人数制で裁量権がある、自由度の高い環境だ」とも考えていました。私は当初から外科を志望していましたが、さまざまな診療科を経験することで知見が広がると考え、マイナーな診療科を3週間ごとに研修させていただいた他、研修スケジュールの合間を縫って自分が回っていない科で施行される関心のある手術に参加させていただいたりもしました。

図. 消化器科研修時の1日の主な流れ

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 研修を始めたばかりの頃の当直時、搬送されてきた患者に対して何をすべきか分からずおどおどしていると、外勤の救急医から「ぼうっとしてないで、できることをやれ」と一喝されたことがあります。職務に対する姿勢が変化するきっかけとなった出来事でした。その後、救急外来では上級医にすぐ相談できる環境の下、裁量権を持って診療する機会を多く得ました。

連絡船の運行スケジュールを含め患者の入退院を調整

 その地域ならではの疾患や医療の在り方を経験できたのも大きな収穫でした。香川県はマダニが多い土地のため、それに関連する疾患を学ぶ機会があった他、離島が多い環境のため、患者の入退院/外来のタイミング調整に関して連絡船の運航スケジュールを含めて考慮する場面もあったことから、「医療というものはその土地の生活習慣や文化と密接に関わっている。診療は患者の生活の一部でしかない」と実感しました。

 仕事以外では、病院主催の納涼祭と忘年会があり、数百人規模で参加します。納涼祭では早食い競争でケーキを平らげ、忘年会の演芸では仮装してと、体を張ったのはいい思い出です。

 これまで縁のなかった遠方へ研修に行くことに抵抗を感じる人は多いと思います。私自身も知らない土地で2年間生活することに当初は不安を感じました。しかし、実際に行ってみると、三豊総合病院は温かみのある人間関係を築きやすく、上級医や同期の医師、看護師、メディカルスタッフの優しい支えの下、右も左も分からない状態の初期研修医からでも研修しやすい環境でした。また、近年はオンライン勉強会や臨床支援ツールアプリの「UpToDate」、医学雑誌、医書.jpなど学習手段も充実しており、大都市圏の施設に対するハンディキャップを感じることはほとんどありませんでした。

写真. 同期の医師たちとの集合写真

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「これだけは避けたい」で選ぶのも一手

 現在、初期研修制度は2年間と期間が決まっているため、知らない土地を選ぶことへの心理的ハードルは低くなったと思います。どの研修施設にもメリット・デメリットはあり、「ここなら間違いない」という選択肢は存在しません。だからこそ、「これだけは避けたい」という視点で探すのも1つの方法です。病院ごとの特徴や環境を知る機会が限られている中で、「失敗した」と思うリスクを避ける助けになるかもしれません。私自身は、ハイポな(研修が楽とされる)病院を避けたいと考えていました。

 研修を終えて、異郷を選んでよかったと思っています。私の経験が全ての人に当てはまるわけではありませんが、1つの参考になればうれしいです。選択に迷うこともあると思いますが、皆さんが自分なりに納得のいく研修を送れることを願っています。

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