大学と市中病院、異なる立場での経験が宝に 市立宇和島病院/愛媛大学病院での初期研修 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 編集部から 研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」。国家試験に合格したばかりの先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。 玉井 葉奈 (たまい はな) 所属:愛媛県立子ども療育センター 小児科 研修先:市立宇和島病院/愛媛大学病院(愛媛県:2022年4月〜24年3月) 三次救急病院で週3回の勉強会 基幹病院と協力施設で1年ずつ初期研修を受けられる「たすきがけプログラム」のおかげで、大学病院、市中病院それぞれの強みを生かした研修ができました。 1年目は市中病院での研修でした。研修先は愛媛県内の複数の病院から選べたため、県庁所在地の松山市から最も遠方にある市立宇和島病院に決めました。同院は愛媛県南部~高知県西部と広範な地域をカバーする三次救急病院です。 周りに大きな病院がないことから、研修中は軽症〜重症例までさまざまな症例を経験しました。救急対応は上級医と研修医が2人1組で担当し、1症例ずつ丁寧なフィードバックをいただきました。複数の病院がある地域では、救急対応した患者/入院中に担当した患者が帰宅後に体調を崩しても、他の病院を受診したりするなど元の病院を必ずしも受診するわけではありませんが、ここでは多くの場合、患者は当院を受診します。そのため、帰宅後にどのような経過をたどったのかについて知ることができたのも大変勉強になりました。 市立宇和島病院のスタッフは「この地域の医療を担っている」という意識を共有しており、自分も未熟ながらその責任を日々感じていました。病院全体が研修医の指導に熱心で、指導医・上級医の下で病棟管理や手技の実践経験を数多く積むことができました。さらに朝の時間には、論文抄読会の他、救急症例、心電図などに関する勉強会が週3回ほどあり、実臨床以外で学ぶ機会にも恵まれました。 図. 市立宇和島病院循環器内科研修時の1日の主な流れ 地方というと交通機関の不便さなどをデメリットに感じる方もいるかもしれません。しかし現場には、そのデメリットを踏まえた上で研修を希望した研修医が少なくなく、積極的で真面目な人が多いことが大変魅力に感じました。研修医室では症例について互いに相談し合ったり、エコーや中心静脈カテーテル(CVC)挿入の練習をしたりしました。また救急対応で困ったときには、必ず誰かが助けにきてくれました。積極的な同期たちの刺激があったからこそ研修を頑張れたと思います。 写真. 宇和島城前での記念撮影 大学病院で多様な手技と希少疾患を学ぶ 2年目の大学病院への異動日が迫った頃には「もっと宇和島で研修したい」と後ろ髪を引かれる思いがありました。しかし振り返ってみると、それぞれの施設で研修できたことは大変良かったと感じています。 私は小児科を専門として選択しましたが、小児の循環器疾患や血液疾患のうちには市中病院だけではなかなか経験できない疾患もあります。大学病院ではそうした希少疾患を学ぶことができました。さらに学会発表を3度担当させていただいたり、国際学会へ同行させていただいたりと、医学研究に触れる機会が豊富なことも大学病院の利点であると思いました。 「大学病院では手技などの経験は積めないのではないか」という不安を感じるかもしれませんが、愛媛大学病院では、挿管や腰椎穿刺、骨髄穿刺、胸腔ドレナージ、麻酔管理など多くの機会をいただきました。もちろん難しい症例も多く、治療方針に直接関わる機会はなかなか得られないかもしれませんが、自分が主体となって診療する立場でないときには上級医の診療を通じて学ぶことができます。 「たすきがけプログラム」を将来の糧に 医療施設にはそれぞれ地域の中での役割(患者を紹介する側/紹介を受ける側)があります。「たすきがけプログラム」を通じて双方の施設で勉強できたことは、将来各科の医師として働く上での糧になると感じています。研修先を市中病院にしようか、大学病院にしようかと悩んでいる方にとって、どちらも体験できる「たすきがけプログラム」は1つの選択肢になるのではと思います。 地方で研修し、その地域ならではの特徴を知ることも、医師として働く上で得難い経験になるのではと思います。進路選びに苦労することもあるかと思いますが、その過程は自分自身と向き合う良い機会でもあります。たくさん考えて皆さんにとって素晴らしい選択ができることを願っています。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×