都内、離島、被災地、15病院で医療を実践

ときわ会常磐病院での初期研修

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編集部から
研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」。国家試験勉強中の先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。

小嶋 智郎 (こじま ともろう)

所属:聖路加国際病院 内科
研修先:ときわ会常磐病院(福島県:2023年4月〜25年3月)

小嶋 智郎 (こじま ともろう)

医学生時代の想像を超えた、中規模病院の初期研修

 初期研修を振り返って感じたのは、初期研修先を選ぶ上で重視すべき点が医学生と研修医では全く異なっていたということです。医学生の頃はハイパー系の超有名病院を念頭に病院探しをしていました。すなわち、「全ての診療科が揃い、二次救急にとどまらず三次救急も経験できる大病院で、同期の研修医数は12人程度と多過ぎも少な過ぎもしない、症例の奪い合いにならないような環境こそが素晴らしい」という想像の下で研修先を選ぼうとしていました。

 その後、実際に研修に向かったのは福島県いわき市の常磐病院でした。学生の頃からお世話になっていた研究室の先生が同院の臨床研修センター長だったという縁で決めたのですが、同院はやや小さめの中規模病院(240床)で、初期臨床研修病院としてはまだ2年目という生まれたての施設でした。医学生の頃の自分が想像していた大病院と比べると診療科は少なく、同期もわずか3人という環境でしたが、結論から申し上げて非常に面白く、他では味わえない初期研修生活だったと感じています。

 研修では同院独自の強みをはっきりと体感しました。泌尿器科は腎移植を扱う他、手術支援ロボットda Vinciを用いた手術を毎日施行していましたし、腎臓内科は透析管理の機会が多く、約150床を1日3回転の頻度で対応していました。これらの科では最先端の医療技術に高い頻度で触れることができました。

図. 泌尿器科研修時の1日の主な流れ

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1カ月ごとに新環境で学ぶ

 さらに、私が考える常磐病院の1番の魅力は、医師として赤子同然の時期に多様で個性豊かな医療現場を経験できることです。15病院、2年間で研修させていただきました。東京都内有名病院の1つで救急や総合内科に強みをもつ板橋中央総合病院、東日本大震災の被災時に福島第一原発から最も近い立地で産科医療を継続していた南相馬市立総合病院、医療DX分野を先頭に立って切り拓いている愛媛県四国中央市のHITO病院、離島という特殊環境だからこそ発展が求められる超音波を駆使した総合診療を展開する隠岐島前病院、元日を襲った能登半島地震後のインフラが整わない輪島市の医療現場、幸福度ランキングトップの福井県で地域医療としてAdvance Care Planning (ACP)を重ねるオレンジホームケアクリニック、診断・管理が困難な症例が集まる大学病院など-1カ月ごとに新しい病院で研修に臨むのは肉体的にも精神的にもタフではありましたが、施設ごとに異なる先輩医師の方々のキャリアや人生観に触れ、医師としての思考回路の幅を広げられました。同時に、多くの環境を知ることで1施設だけで働き続けることの怖さ、施設独自のルールや文化をそれと知らずに常識として取り込んでしまうことの怖さに気付くことができました。

写真1.

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 各施設を巡り、それぞれが強みとする診療科での研修を通して勉強の仕方を学べたこと、そこに在籍している初期研修医たちとの交流から自分の自己研鑽の不足している点/優れている点を認識できたことは、初期研修の所属先が大規模病院と比較すると診療科数も医師数も少ない中規模病院であるという環境を補って余りある収穫になったと思います。

地域ならではの交流も

 各施設で過ごせて良かった点はそれだけではありません。メディカルスタッフや患者との交流を通じて、それぞれの地域に根付いている文化にどっぷりつかることができました。さらに施設の外では、①四国八十八カ所を巡る、②隠岐諸島の盆踊り大会に参加する、③病院スタッフとイカ釣りに行く、④研修同期と乗馬スクールに通い馬術を会得する-など、地域ならではの体験ができました。

写真2.

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写真3.

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 「初期研修の善し悪しは病院次第だ」と思う医学生も少なくないかと思いますが、結局は自分がどうやって勉強していくかに研修の成果は依存するので、どんな病院でも大きく変わることはないだろうと思います。まずは勉強の仕方が学べて、それを自分が先頭に立って実践でき、プライベートの時間がたくさん取れる環境がいいのではないでしょうか。私は公衆衛生に興味があって、さまざまな医療現場を経験したいという目標が前提にあったため、常磐病院はその点でも良い環境でした。自分はどのような医師になりたいのか、どういう分野に興味があるのかも踏まえて考えてみてください。

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