「断らない医療」の最前線で学ぶ

社会医療法人財団石心会 埼玉石心会病院の初期研修

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編集部から
研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」。国家試験勉強中の先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。

古川 紀光 (ふるかわ としあき)

所属:横浜市立大学市民総合医療センター 脳神経外科
研修先:社会医療法人財団石心会 埼玉石心会病院(埼玉県:2023年4月〜25年3月)

古川 紀光 (ふるかわ としあき)

応需率トップクラス施設で救急外来を知る

 初期研修では救急対応をしっかり学びたいと考え、「断らない医療」を実践している埼玉石心会病院を見学しました。その際に驚いたのは救命初療室の広さです。同院ER総合診療センターには20床以上のベッド(ホールディング含む)が配置され、多数の看護師、救急救命士が医師とともに働いていました。こうした設備・体制が何台もの救急車の同時受け入れを可能にし、埼玉県内トップクラスの救急応需率を実現していたのです。研修同期の人数、脳神経外科領域の症例数の多さも決め手となり初期研修先に選びました。

 1年目の5月から救急当直に入り、救急対応を徹底的に学びました。入職時の病床数は450床であり、研修医の人数は1学年10人でした。2年間を通して多くの症例を経験でき、同期と手技などの機会を奪い合うことはありませんでした。それどころか、救急外来では患者が絶え間なく搬送されてくるため、自分の診療中に他の研修医はどのような症例を診ているかを把握するのも困難でした。同センターの救命4床/ホールディング22床が全て埋まる日があるとは見学時には夢にも思っていませんでした。

写真1. 救急対応時の様子

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勉強会を立ち上げ仲間と研鑽

 2年目を迎えたころ「救急外来での経験を共有できる場をつくりたい」と考え、救急リフレクションという勉強会を立ち上げました。研修医が自験例を通して新たに学んだことや反省点を互いに報告しあう勉強会で、私は失神を主訴に搬送された1例を供覧しました。その症例では来院時のモニター心電図に異常は見られませんでしたが、他の検査結果を待っている間に容体が変化し、心電図波形に異常が認められました。救急外来では多忙のあまりモニターへの注意が行き届かないこともありますが、異変を感じたときには必ずモニターを確認する重要性を実感しました。

 もちろん研修医向けの勉強会はこの他にも複数あり、教育に力を入れている病院だと感じました。勉強と実践を繰り返すうち、1年目には苦手だった胸腔ドレーン施行も、2年目には1人で完遂できるようになって嬉しかったです。

写真2. 同期の研修医たち

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 研修の特徴としては、内科系の診療科が2カ月ごとのローテーションになっています。2カ月間同じ診療科で学ぶことで、断片的な知識ではなく体系的な理解を得ることができました。また外科系では脳神経外科で3カ月間研修しました。開頭手術、血管内治療のいずれもほぼ毎日の頻度で手術に参加することができました。

図. 総合診療科研修時の1日の主な流れ

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 その他、自院にはない診療科(産婦人科、小児科、精神科など)は外部での研修となります。普段はあまり機会のない手技(小児のルート採血など)を多く経験できましたし、他施設の研修医と交流する良い機会にもなりました。

 地域研修先は北海道の知床、新潟県の南魚沼、沖縄県の宮古島などから選択できます。私は宮古島で1カ月間研修しました。健診・プライマリケアなどの外来研修は初めて行う業務が多く勉強になったことはもちろん、きれいな海でダイビングを楽しめたのも良い思い出です。

良好な食事と景色で意欲アップ

 埼玉石心会病院の院内設備の推しは食堂です。昼食は350円とリーズナブルでありながらとてもおいしく、鰻などのスペシャルメニューが出る日もありました。さらに天気が良い日には、テラス席に座って富士山を一望することもできます。食事や景色を楽しめると仕事へのモチベーションが自然と上がる気がします(笑)。

 現在、後期研修を進める中で痛感しているのは初期研修時の経験がいかに貴重だったかということです。相談できる上級医がいつもそばにいてくれた初期研修の当直などとは違い、後期研修ではこれまでに学んだことを生かして1人で対応しなければならない場面も多くなります。後期研修やさらにその先の土台となるような良い初期研修先を皆さんが見つけられることを願っております。

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