〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。6月16~22日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「SGLT2阻害薬の腎保護」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。 腎保護効果を実証したRCTは症例の多くが蛋白尿「陽性」 SGLT2阻害薬は今や血糖降下薬だけではなく、心腎保護薬としても頻用されているようだ。先週、第68回日本腎臓学会(6月20~22日)に参加し、いくつかのセッションを聴講したが、同薬の腎保護効果に寄せるドクターたちの期待の大きさを感じた。 ただし、同薬の慢性腎臓病(CKD)に対する進展抑制効果を実証したランダム化比較試験(RCT)は、対象の多くが蛋白尿「陽性」である〔DAPA-CKD試験(N Engl J Med 2020; 383: 1436-1446)、EMPA-KIDNEY試験(Clin Kidney J 2023; 16: 1187-1198 )〕。 そこで、奈良県立医科大学の松井勝氏らは、蛋白尿「陰性」かつ糖尿病「非合併」のわが国CKD例に対するSGLT2阻害薬の腎保護効果を自験例データで検討し、6月19日、Kidney 360で報告した。 わが国のCKD例は、52%が尿蛋白定性法「-」か「±」である (平成21~23年厚生労働省科学研究費補助金研究 渡辺班)。このようなCKDに対し、SGLT2阻害薬でどれほどの腎保護効果が認められたのだろうか。解釈の難しい結果となった。