「ご縁」が将来のキャリア設計につながる

下関市立市民病院の初期研修

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編集部から
研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」。国家試験勉強中の先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。

松島 諒典(まつしま りょうすけ)

所属:下関市立市民病院
研修先:下関市立市民病院(2024年4月〜26年3月)

松島 諒典(まつしま りょうすけ)

インプットとアウトプットのバランスが良好

 当院の初期研修は、インプットとアウトプットのバランスが良いと感じます。各診療科のローテーションでは、インプットとして座学的な知識だけでなく、各科での動き方や考え方を生きた経験として学ぶことができます。また、同期の人数が多すぎないことから、ローテーションにおいて自由選択期間が長いのが特色です。

写真.研修同期

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 アウトプットの一番良い機会が当直です。下関市では3病院での輪番制を敷いており、救急当番日には下関市内全ての救急車を受け入れます。そのため、診療科や病態を問わず、一次から三次までさまざまな症例のファーストタッチを経験することができます

3年目以降の進路を最重要視

 初期研修病院を選ぶ際に最も重要視したのは3年目以降の進路です。専攻する診療科はもちろん、どの大学の医局に入局するか、市中病院のプログラムに登録するか、3年目の進路決定は初期研修以上に多様です。当院は内科・外科とも多くの診療科に常勤医がおり、九州大学を中心に、診療科ごとに複数の大学医局から医師が派遣されています。

 私は福岡県出身ということもあり、九州大学への入局を前提に今の病院を選びましたが、診療科や出身大学を問わずさまざまな進路を応援してくれる病院です。これまでに当院で研修された先輩方も、当院の母医局だけでなく、出身大学や市中病院の専門医プログラムなど、多岐にわたる進路で活躍されています。

やる気に応じて研修密度を濃くできるフレキシブルさが魅力

 定められた研修医のdutyは多くなく、フレキシブルな研修を行うことができます。志望診療科など特に力を入れたい科では、お願いすれば夜間のオンコールに一緒に呼んでいただいたり、時間外の処置に参加させていただいたりと、研修医のやる気に応じてさらに研修の密度を濃くすることができます。

図.消化器内科の1日

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 初期研修医の裁量権は他の病院と比べて大きくはない印象ですが、その分しっかりフィードバックを受けることができ、上級医の先生方にもためらわずに質問することができます。もちろん、スキルアップに伴い少しずつ任せていただける範囲が増えてくるので、日々のモチベーションにつながっています。

 上級医を含む診療科全体のカンファレンスは各科でありますが、研修医独自の勉強会として、週に1回、膠原病内科の先生による基礎免疫学の成書を用いた抄読会形式の勉強会を行っていただいています。自力で読破するのは難しい免疫学の成書ですが、勉強会の形をとることで無理なく読むことができますし、実臨床への応用も学ぶことができる大変勉強になる会です。

バスにも鉄道にも好アクセス

 院内にはコンビニエンスストアと職員食堂があり、食堂のご飯は非常においしいと研修医の先生の中でも評判です。当直に入る際は当日の夕食だけでなく翌日の朝食、昼食まで検食が準備されるので、安心して当直や前後の業務に励むことができます。

写真.当直メシ

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 当院から徒歩3分のところに高速バスの停留所があり、福岡の中心街である天神・博多へ直結の高速バスに乗ることができます。また、JR下関駅や高速道路の下関ICにもアクセスしやすく、交通の便の良さは大きな魅力です。

熱い指導に「極めるならこの道」と確信、入局を決意

 どの病院にもそれぞれ良さがあり、研修病院を決めるのは簡単なことではありません。病院の規模、立地、研修医の人数、診療科など、さまざまな要素が関係します。初期研修が始まった後、今度は3年目以降どのような道を進むかの決断を迫られます。研修病院以上に多くの因子が関わり、簡単な決断ではありません。その際に人とのつながり、いわゆる「ご縁」は大きな決断材料となります。

 私は当院の指導医の先生方の熱いご指導に感銘を受け、消化器内科に興味を持ちました。ローテーションが終わってから院外の勉強会や医局の行事に参加させていただいたこともあり、自分が極めるならこの道だと確信を得て、研修医1年目の冬に当院消化器内科に医師を派遣していた九州大学大学院病態機能内科学講座(第二内科)消化器研究室に入局を決めました。

 私自身、入職した段階では消化器内科は志望診療科に入っていませんでした。しかし、診療科を迷う中で、最後に背中を押したのは病院の指導医の先生方と、先生方がつないでくださった医局とのご縁でした。

 計画的に病院選びをするのと同時に、どの病院で研修してもその病院で得たご縁を大切に、自分の将来のキャリアをつくっていってほしいと思います。

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