知れば知るほど打つ手なし? 心房細動例の心不全

「無症候でもリスク上昇」なのに管理指針なし

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〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。7月7~13日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「心房細動例の心不全」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。

AF例における有効な心不全予防法は未確立

 心房細動(AF)は心不全の大きなリスクであり、同時に心不全はAF例最大の心血管(CV)死因である。にもかかわらず、AF例における心不全予防に向けた有効な介入法は確立されていない。これは本連載でもご紹介した通りである(関連記事「打つ手なし? 増え続ける『心房細動例の心不全』」)。

 これらはいずれも「症候性」AFで得られた知見だが、AFは「無症候性」の時点で既に、心不全リスクを上昇させている可能性がある。イタリア・University of Modena and Reggio EmiliaのGiuseppe Boriani氏らが7月9日、ランダム化比較試験(RCT) ARTESiAの事前設定追加解析の結果として、Heart Rhythmで報告した。

4,000例超の無症候性AF例を対象にCVイベントリスクを検証

 解析対象となったARTESiA試験の参加例は、植え込み式デバイスで持続時間が6分~24時間の無症候性AFが検出され、「CHA2DS2-VAScスコア≧3」または「脳卒中既往」を有した4,012例である。欧州・北米の16カ国から登録された。
 
 また全例、アピキサバン5~10mg/日かアスピリン81mg/日を服用している(本試験本来の目的は、これら2剤による「脳卒中・塞栓症」「大出血〔国際血栓止血学会(ISTH)定義〕」リスクの比較。前者はアピキサバン群で0.46%/人・年の有意低下も、後者は逆に0.77%/人・年の有意上昇となった)。

 患者背景 は、平均年齢が76.8歳、女性の割合は36.1%。CHA2DS2-VAScスコア平均は3.9、脳血管障害・全身性塞栓症既往例は9.0%だった。また試験参加前6カ月間における、AF最長持続時間の中央値は1.47時間(四分位範囲0.20~4.95時間)だった。

 これら4,012例を対象に、「AF症候化」または「持続時間>24時間」への「無症候性AF進展」、および「無症候性AF進展」に伴う「CVイベントリスク上昇」、さらに「無症候性AF進展」予知因子の3点を探った。「持続時間>24時間」という基準は、これを超えると脳卒中・塞栓症のハザード比(HR)が非AF例に比べ3.24の有意高値となるとの報告に基づく(95%CI 1.51~6.95、Eur Heart J 2017; 38: 1339-1344)。

宇津 貴史(うつ たかし)

医学系編集会社、広告代理店(編集職)とメディカルトリビューン(記者)を経て、2001年からフリーランス。新聞系メディアなどに記名、匿名で執筆を続ける。平日は原則として毎朝、最新論文をチェック(https://x.com/Office_j)。特定非営利活動法人・臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員。会員向けニュースレター記事執筆、セミナーにおける発表などを担当。日本医学ジャーナリスト協会会員。共著に『あなたの知らない研究グレーの世界』(中外医学社)。

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