「CGMによる血糖見える化」と糖質制限食の関係論

ケトン産生食下でのCGM・SMBG比較研究から

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:「CGMはSMBGより血糖管理に優れる」との研究が相次ぐ

 2020年9月の本連載で、持続血糖モニタリング〔CGM;ただし、この場合は間歇スキャン式(isCGM)〕は指尖採血による一般的な自己血糖測定(SMBG)に比べ、さまざまな点で血糖管理に有用なことを紹介した(関連記事「Flash Glucose Monitoringで血糖が安定改善」)。

 具体的には、非インスリン療法中の2型糖尿病患者の24週時点でのHbA1cの改善に優れ、time in range(TIR;センサーグルコース値が70~180mg/dLに入っている時間帯の割合)の増加やtime above range(TAR;センサーグルコース値が180mg/dL超になっている時間帯の割合)の減少をもたらし、かつHDL-Cの増加やトリグリセライド(TG)の減少傾向も認められていた(BMJ Open Diabetes Res Care 2020; 8: e001115)。

 こうした報告はその後も続いており、昨年(2024年)、デンマークのステノ糖尿病センター(米国のジョスリン糖尿病センターと並ぶ世界的に有名な糖尿病専門医療機関)からの報告でも、CGM群はSMBG群に比べて、インスリン療法中の2型糖尿病患者の12カ月時点でのHbA1cの改善に優れ、TIRの上昇やTARの低下をもたらし、インスリン量が減り、体重も減り、治療満足度を高めていた(Diabetes Care 2024; 47: 881-889表1)。

表1. 既報で示されたCGMとSMBGの血糖管理指標

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BMJ Open Diabetes Res Care 2020; 8: e001115、Diabetes Care 2024; 47: 881-889)

 また、1型糖尿病(Diabetologia 2022; 65: 604-619)および2型糖尿病(Diabetologia 2024; 67: 798-810)を対象としたメタ解析でも、CGM群でのHbA1cの有意な改善が確認されている。なお、time below range(TBR;センサーグルコース値が70mg/dL未満の時間帯の割合)については、表1の2つの研究では有意差はなかったが、上記2型糖尿病でのメタ解析ではTIRの増加(6.36%)、TARの減少(-5.86%)に加え、TBRも有意な減少(-0.66%)が示されていた。

 しかし、よくよく考えてみれば、本来、血糖値を測定するだけで血糖管理が改善されるはずがない。特に、上記ステノ糖尿病センターの研究においては、質問票における身体活動量に差異はなかったことも明示されている。こうしたことを考えると、CGM群でインスリン投与量が減って、体重が減って、HbA1cが改善する理由は、何らかの食事要因への影響だと考えるべきであろう。

 2020年9月の本連載でも、糖質摂取の制限がCGM群でのみ生じていたのではないかという私の想像を紹介させていただいたが、このたび、糖質制限食(ケトン産生食)指導下でのCGM群とSMBG群とを比較した論文がDiabetes Technol Ther2025; 27: 341-356)に掲載された。

 そしてある意味、私の予想通り、CGM群とSMBG群で血糖やCGM関連のアウトカムに差異はなかった。「CGMによる血糖値の見える化(特に食後高血糖の見える化)は、糖質制限食の自発的実行率を向上させることで血糖や体重を改善させる」という私の仮説を支持するデータであると考え、ご紹介したい。

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