福島の甲状腺検査に見る「過剰診断の罪」

宮城学院女子大学 生活科学部教授(臨床医学)緑川早苗

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 今年(2025年)6月12日、私が所属する若年型甲状腺がん研究会(JCJTC)は、福島県で原発事故後に行われている超音波検査を用いた甲状腺がんスクリーニング(以下、甲状腺検査)に対する要望書を福島県に提出した。実施主体である福島県に学校検査の即時中止や住民への正しい情報提供を求めたものである。JCJTCは福島の甲状腺検査に代表される若年の甲状腺がんの過剰診断について、今考えるべき課題であるという認識で発足し、国内外の専門家が学会横断的に参加している。

 私自身は甲状腺検査の現場に約10年間関わり、過剰診断の問題に直面し、どうにかしなければいけないという考えでJCJTCに参画した。JCJTCが行政への要望書提出を行った背景の一つに、福島県で生じている過剰診断の被害は、今日の医療における喫緊の課題であり、それについて多くの人々に知っていただきたいという願いがある。

 過剰診断の問題は、医療者にとっても分かりにくく、解決が難しい面が確かにあるが、第三者としてではなく日常診療でも発生しているより身近なものと考えていただければ、理解が深まるのではないかと思う。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする