〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。8月11~17日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「新規降圧治療」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。 交感神経抑制作用が確認、降圧作用は? 高血圧に対するデバイス治療としては「腎デナベーション」(RDN)を筆頭に、「圧受容器反射刺激治療」(BAT、Auton Neurosci 2024; 256: 103219)などがよく知られている。いずれも交感神経系亢進の抑制を介した降圧を目指す。ただし侵襲性は高い。 それに対し、経皮的耳介刺激を介した迷走神経刺激(taVNS)は非侵襲的ながら、交感神経抑制作用が、健常者だが確認されている(Brain Stimul 2014; 7: 871-877) 。 そうなると期待されるのが「降圧作用」である。 しかし、2023年に報告されたランダム化比較試験(RCT)12報のメタ解析では、taVNSによる収縮期血圧(SBP)低下幅は対照に比べ1.15mmHgのみであり、有意差とはならなかった(心拍数は有意に低下、Front Neurosci 2023; 17: 1227858)。 ところが、RCT 18報を解析した最新のメタ解析によると、「耳介指圧」「耳介電気刺激」を用いたtaVNSに、有意な降圧作用が確認された(前出メタ解析は鍼灸なども含む)。 著者は安佐医師会病院(広島市)の永井道明氏(執筆時は米・University of Oklahoma所属)。8月13日、EHJ Openで報告した。