2年間の経験が医師としての礎

姫路医療センターの初期研修

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編集部から
研修医の実体験を通して臨床現場の生の声を伝える「初期研修リアル体験記」。国家試験勉強中の先生は未来の自分を重ねながら、ベテランの先生はご自身の思い出を振り返りつつお読みいただければ幸いです。

鶴 拓人(つる たくと)

所属:菊陽病院 精神科
研修先:姫路医療センター(2023年4月〜25年3月)

鶴 拓人(つる たくと)

寮費は月額3万円弱

 私が姫路医療センターで初期研修医として過ごした2年間は、医師としての礎を築く、非常に貴重な時間でした。私の経験が、これから初期研修に臨む皆さんの参考になれば幸いです。

 同センターの敷地内に研修医が住める寮があり、月に3万円弱で住むことができました。建物は少し古いものの(笑)、部屋は広く快適でした。良かったのは、同期の研修医たちと一緒に過ごせたことです。専門科は違っても、同じ道を志す仲間として、互いに支え合い、励まし合いました。誰かの誕生日には、みんなで集まって手づくりの料理を囲み、ささやかながらも盛大にお祝いをしました。あの日々の楽しかった思い出は、今でも私の心の支えになっています。

ドクターカーでの忘れられない経験

 最も印象に残っているのは、救急科でのローテーション中に経験したドクターカーでの出動です。その日は、交通事故による重傷患者の対応でした。現場に到着すると、患者さんは車内に閉じ込められ、意識が朦朧としていました。

 指導医の先生は冷静に状況を判断し、私に指示を飛ばしました。初めての現場での処置、しかも救急車の中という狭い空間での作業は、想像以上に緊張しました。しかし、指導医の先生の的確なアドバイスと救急隊員の方々の協力のおかげで、迅速に患者さんの状態を安定させることができました。

 病院に搬送された後も、私たちは引き続き集中治療室で治療に当たりました。患者さんの命を救うために、多職種の医療従事者が一丸となって働く姿を間近で見て、あらためてチーム医療の重要性を実感しました。この経験は、医師として患者さんの命と向き合うことの重みを、深く心に刻んでくれました。

毎週の勉強会で同期との結束を強化

 研修医の毎日は、忙しいながらも充実していました。病院の地下にある食堂は、日替わりの定食から麺類までメニューが豊富で、しかも安くておいしいので、昼食はいつも同期と一緒でした。短い時間でしたが、たわいもない話をしたり、午前中の症例について語り合ったりする、貴重な息抜きの時間でした。

 姫路医療センターの研修プログラムの特徴は、個人のやる気を尊重してくれるところです。もっと多くの症例を経験したい、もっと深く学びたいというやる気のある研修医は、朝早くから夜遅くまでとことん働くことができますし、プライベートも大切にしたいという人は、仕事とプライベートのバランスを取りながら働くことができます。それぞれのライフスタイルに合わせて研修を進められる柔軟な環境は、私たち研修医にとって非常にありがたいものでした。

図.救急科の1日

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 また、毎週水曜日には、研修医全員が集まる勉強会がありました。指導医の先生方が最新の知見や貴重な症例について講義してくださり、質問にも丁寧に答えてくださいました。同期が発表する症例検討会では、自分とは違う視点からのアプローチを知ることができ、とても勉強になりました。この勉強会は、知識を深めるだけでなく、同期との結束を強める良い機会でもありました。

1人で抱え込まず、周囲を頼って

 これから初期研修に臨む皆さん、医師としての第一歩を踏み出す皆さんは、期待と不安で胸がいっぱいだと思います。しかし、どうか安心してください。姫路医療センターに限らず、多くの研修病院には、温かく、そして熱心に指導してくださる先生方や、同じ道を歩む心強い同期たちがいます。

 研修は決して楽なことばかりではありません。つまずくこと、悩むこともたくさんあるでしょう。しかし、その1つ1つの経験が、必ず皆さんの医師としての成長につながります。壁にぶつかった時は、1人で抱え込まず、同期や先輩、そして指導医の先生方を頼ってください。皆さんの周りには、いつでも手を差し伸べてくれる仲間がいるはずです。

 研修医としての2年間で培った経験と、患者さんへの感謝の気持ちを忘れずに、皆さんの医師人生が素晴らしいものになることを心から願っています。頑張ってください。

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