指南㉑差別化は「地理×専門×患者体験」で考えるべし

基礎から始める組織マネジメント#04 ポジショニング

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 診療科を増やすか、分院を出すか、新しいサービスを導入するかー。これらは一見バラバラに見えますが、実は全て「どこで、どう戦うか?」という問いにつながっています。

・このエリアに需要はあるのか?
・競合が多い中でどう差別化するのか?
・自由診療を導入するか、それとも保険診療に専念するか?

 こうした問いに体系的に答えるための方法論が、ポジショニング戦略です。

 この考え方は、米国の経営学者であるマイケル・ポーターが整理した戦略論に端を発します。業界構造を冷静に分析し、「どの立ち位置(ポジション)に身を置けば有利か」を見極めて、持続的な競争優位を築くことを目的としています。

 医療はしばしば「競争のない世界」と誤解されます。診療報酬は全国一律であり、患者は誰でも自由に医療を受けられる。だから「ビジネスの戦略なんて関係ない」と思われがちです。

 しかし、実際はどうでしょうか。同じ街に複数の内科クリニックがあれば、患者は評判や待ち時間で選びます。自由診療では、価格やサービスの質で明確な競争が存在します。立地や専門性によって、患者層も大きく変わります。

 つまり、医療機関も「競争」のただ中にあるのです。

 恐ろしいのは、戦略的な判断をすることなく「なんとなく」で決めてしまうことです。診療科を追加したのに患者が集まらない、分院を出したのに人材が確保できない、自由診療を始めたのに採算が合わない─。こうした失敗の多くは、「どこで戦うか」を考えずに動いた結果といえます。

 だからこそ医療機関にとっても、ポジショニング戦略は単なる経営学の理論ではなく、現場で日々下す意思決定を支える「羅針盤」なのです。今回はこの羅針盤の使い方を見ていきましょう。

溝口 博重(みぞぐち ひろしげ)

株式会社AMI&I代表取締役、NPO法人医桜代表理事

「日本の10年後の医療・ヘルスケアを変革する」をミッションに、全国の医療機関の人材採用・組織マネジメントを中心とした経営支援を実施。またNPO法人の代表理事として「日本の医療の質の向上」に取り組む。

溝口 博重
  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする