血糖値は「秋冬」と「週末」に悪化する

CGMデータの解析研究から

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:冬の血糖悪化はクリスマスや正月だけでは説明できない

 10年以上前に血糖値には年内変動があり、(秋の終わり~)冬にHbA1cが高値になることをお伝えしたことがある(「血糖"年内"変動も合併症リスクに!」)。

 この現象はかなり以前から知られており、欧米では遅くとも1987年に(Diabetes 1987; 36: 265-268)、わが国でも2001年には(Diabetes Care 2001; 24: 1503)報告されていた。その後、わが国の糖尿病専門医の研究グループJapan Diabetes Clinical Data Management Study Group(JDDM)からも同様の報告がなされ、JDDM49によれば、HbA1cのみならず、血圧やLDLコレステロールも冬に悪化するとのことであった(Diabetes Care 2019; 42: 816-823)。

 ここで気になるのが、気候(気温)がそうした血糖管理の悪化に関与しているのか、それともクリスマスや正月といった季節的イベント(家族・親族が集まってというだけでなく、忘年会や新年会といった社会的行事も重なり、糖質や塩分の過剰摂取が生じやすいと想像できる)が関与しているのか、である。

 これについては、南半球(オーストラリア・メルボルン)でも寒い時期にHbA1cが高くなり、熱帯地方(シンガポール)では季節性変動が小さいことが報告されており(J Diabetes Sci Technol 2009; 3: 668-671)、気候が重要であることが示唆されていた。

 このたび、持続グルコースモニター(CGM)のデータを解析したところ、秋冬に血糖値が悪化するという季節性変動だけでなく、週末に血糖値が悪化するという週内変動が存在することが米国から報告された(J Diabetes Sci Technol 2025年5月24日オンライン版)。診察室での糖尿病患者とのコミュニケーション、あるいは患者指導に有用な情報であると考え、ご紹介したい。


山田 悟(やまだ さとる)

1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。 現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医

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