高齢心筋梗塞患者への多面的リハビリの提案

再入院を減らし自立を守る新たなアプローチ

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ
〔編集部から〕気鋭のドクターが独自の視点で論考を展開する人気連載「ドクターズアイ」の執筆陣に、今月から新たに桜十字八代リハビリテーション病院副院長/熊本大学客員教授の小島淳氏が加わりました。循環器領域を中心に、話題の最新論文を日常臨床の立場で徹底解説していただきます。

研究の背景:従来型リハでは届かない高齢者への課題

 心筋梗塞(MI)は依然として高齢者の主要な死因であり、急性期治療の進歩にもかかわらず再発・再入院・死亡のリスクは若年者に比べて高いことが知られている。心臓リハビリテーション(心リハ)は二次(再発)予防の柱として確立されているものの、実臨床では参加率の低さ、早期離脱、コスト面などの課題が顕著であり、とりわけ身体機能が低下した高齢者では十分な恩恵を受けられていない。

 特に高齢の急性MI(AMI)患者は、退院後の活動性低下や身体機能の急激な悪化により要介護へ直結するリスクを抱えている。従来の心リハは比較的若年/活動性の高い患者を念頭に置いて設計されており、80歳前後のフレイル高齢者には必ずしも適応するとは限らないのが現実である。そのため、「病院完結型」から一歩踏み出し、地域・在宅を含めた新しい介入モデルの構築が強く求められている。

 今回はこうした課題に応える、イタリアで実施された多施設ランダム化比較試験PIpELINe(N Engl J Med 2025; 393: 973-982)を紹介し、「多面的リハビリ」の意義について考えていきたい。

小島 淳(こじま すなお)

桜十字八代リハビリテーション病院副院長、熊本大学客員教授

1993年熊本大学医学部卒業後、循環器内科に入局し、国立循環器病研究センターで臨床・研究に従事。熊本大学病院勤務を経て2006年に医学博士を取得。2018年川崎医科大学総合内科学主任教授、2020年熊本大学客員教授、2021年より桜十字八代リハビリテーション病院副院長を務める。日本内科学会、日本循環器学会、日本心臓病学会、日本超音波医学会、日本脈管学会、日本救急医学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本痛風・核酸代謝学会など多数の専門医資格を有し、学術賞受賞や各種ガイドライン策定にも参画。「くまもとハートの会」代表理事として地域医療にも尽力する。研究は循環器内科学を基盤に、大気汚染と循環器疾患、尿酸代謝と心血管イベントの関連を中心とした大規模臨床研究・疫学解析を推進し、「医学と環境」を軸に国際的に成果を発信している。

小島 淳
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