研究の背景:緩和ケアがもっと広まってほしいが... 近年、自宅や老人ホームなどの施設で亡くなる人が増えてきたとはいえ、日本では3分の2くらいの人が今も病院で亡くなっている。医療には限界があり、人はいつか必ず死を迎える。しかし、穏やかな死を迎えることは、今の医療体制の中ではまだまだ難しい。今後、緩和ケアがもっと広まってほしいものだ。 そんなことを思っていたとき、JAMAに「なぜ優れた緩和ケア医は解雇されるのか(Why Good Palliative Care Clinicians Get Fired)」というViewpointが掲載されているのに気付いた(JAMA 2025; 333: 1864-1865)。 著者は3人とも ダナ・ファーバーがん研究所、ハーバード大学、マウントサイナイ医科大学という、米国の名だたる病院に勤務する緩和ケアのスペシャリストである。ひょっとして、このうち誰かが最近不当に解雇されたのだろうか。穏やかな死を迎えることを助けてくれる緩和ケア医が「解雇」されるとは、一体なぜなのだろうか。 そう思いながら読んでみたら、緩和ケア医が「解雇」されたのは、雇用主である病院長からではなく、患者、あるいは主治医チームに拒絶されたという意味であった。 今回は、このViewpointを起点に、緩和ケアの普及を阻害する医師・患者関係について考えてみたい。