〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。10月20~26日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「節酒の降圧効果」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。 高血圧ガイドラインの推奨、米国は日本より厳しい 今年(2025年)8月に公開された日本高血圧学会作成の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(JSH2025)では、高血圧例に対する飲酒量の目安として、エタノール換算で男性には1日「約20~30mL/日」(およそ日本酒1合、ビール中瓶1本)以下、女性には「約10~20mL/日」以下を推奨している。 一方、ほぼ同時期に公開された米国の高血圧ガイドラインの推奨はさらに厳しく、最も望ましいのは「断酒」である。無理な場合はアルコール換算で男性「24~28g/日」〔ビールレギュラー缶(350mL)2本強、ワイン2杯強〕、女性「12~14g/日」までが目安とされている(Hypertension 2025; 82: e212-e316)〕。 では飲酒者が節酒した場合、血圧はどれほど下がるのだろうか。 この点をわが国の多数例で観察した研究が10月22日、 J Am Coll Cardiolで公開された。報告者は聖路加国際病院の鈴木隆宏氏らである。 日本酒1合強、あるいはビールロング缶1本か酎ハイレギュラー缶1本を毎日我慢するだけで、2.0mmHg弱の収縮期血圧(SBP)低下が期待できるかもしれない。 また本研究では、一部で「心臓や血管に良い」といわれてきた「ワイン」が、血圧に与える影響も検討されている。果たして「血圧に良い」アルコール飲料は存在するのだろうか。