ドクターズアイ 大前憲史(泌尿器)

尿路結石の2大破砕術、ベターな選択肢は?

体外衝撃波結石破砕術vs.経尿道的腎尿管砕石術

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ
〔編集部から〕気鋭のドクターが独自の視点で論考を展開する人気連載「ドクターズアイ」の執筆陣に、今月から新たに福島県立医科大学病院臨床研究教育推進部副部長・特任准教授の大前憲史氏が加わりました。泌尿器領域を中心に、話題の最新論文を日常臨床の立場で徹底解説していただきます。

研究の背景:それぞれにメリットとデメリット

 尿路結石症は、排尿障害/下部尿路症状や尿路感染症とともに、泌尿器科診療において遭遇する頻度が最も高い疾患の1つである。『尿路結石症診療ガイドライン(GL)』は日本泌尿器科学会公認の最初のGLであり、2002年に発刊されて以降、2013年、2023年と第3版まで改訂されている。

 個人的な話をすると、2003年から一般病院で泌尿器科医としてのキャリアを開始したが、当時はGLよりも現場の上級医が一番の手本であり、日々のルーティンワークを覚えることで精一杯であった。そんな私に最初に与えられた大きな仕事が、尿路結石に対する体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy;ESWL)。無麻酔かつ日帰りで行えるESWLは患者にとっても医師にとっても手軽であり、比較的安全で複雑な技術を要しないことから、新米の泌尿器科医にはうってつけの仕事だった。ただ、結石が硬かったり大きかったりすると、どうしても1回のセッションでは破砕し切れず、結石除去率(stone free rate;SFR)が安定しない。また、やっと破砕できても今度は割れた破片が連なりstone streetとして尿管を閉塞させてしまう危険性がある。

 このようなESWLとは別に、尿路結石の破砕術には経尿道的腎尿管砕石術(transurethral ureterolithotripsy/ureteroscopyまたはureteroscopic surgery;TUL/URS)という全く異なるアプローチがある。経尿道・尿管的に内視鏡を結石の直下まで挿入し、内視鏡下に結石を直接破砕することができるため、高く安定したSFRを得られる。しかし、ESWLと違って複雑な器具の扱いに慣れる必要があり、新米の泌尿器科医がすぐにできるような手技ではない。また、麻酔や入院を要するため患者にとっても相応の負担を強いられる治療となる。そうした状況から「ESWLとTUL/URSはどちらがよいのか」問題は、以前から泌尿器科医にとって熱い議題となり続けてきた

 ちなみにGL第3版でも「尿管結石(10mm未満)を有する患者に対して、TUL/URSを行うことは、ESWL と比較して、推奨されるか?」がクリニカルクエスチョン4として設定されており「条件付きで推奨」、エビデンスの確実性は「弱い」となっている。

 こうした中、欧州泌尿器科学会のEndourology部門から両手技の費用と効果を比較するシステマチックレビューおよびメタ解析の結果が報告されたので紹介したい(Eur Urol Focus 2025年7月8日オンライン版)。

大前 憲史(おおまえ けんじ)

福島県立医科大学病院臨床研究教育推進部副部長・特任准教授

2003年、名古屋大学医学部卒業。臨床研修後10年間、がん手術を中心に泌尿器科医として研鑽を積む。東京女子医科大学泌尿器科(助教)、京都大学大学院医療疫学分野(博士後期課程)、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター(研究フェロー)などを経て、2020年より現職。専門は泌尿器科学×臨床疫学。臨床業務に携わりながら、臨床研究における方法論的な観点から研究や教育活動に従事。社会健康医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、社会医学系専門医、日本臨床疫学会上席専門家、日本老年泌尿器科学会評議員の他、学会機関誌の編集委員も務める。良質なエビデンスをいかに効率的かつ効果的にユーザーに届けられるかが近年の関心事。著書に『医学論文査読のお作法 査読を制する者は論文を制する』(健康医療評価研究機構)などがある。

大前 憲史
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