ドクターズアイ 小林拓(消化器)

ベドリズマブ部分奏効例、次の一手は?

PRIVEDO試験が示した皮下注投与の有効性

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:部分奏効例における最適な維持療法は未確立

 ベドリズマブ(vedolizumab; VDZ)は腸管選択的に作用する抗α4β7インテグリン抗体として、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)の中等症〜重症例に広く用いられている(N Engl J Med 2013; 369: 699-710N Engl J Med 2013; 369: 711-21)。もともと、点滴静注(IV)製剤として上市されたが、近年は皮下注(SC)製剤が登場し、投与利便性や医療リソースの効率化が期待されている(Gastroenterology 2020; 158: 562-572.e12J Crohns Colitis 2022; 16: 27-38)。

 しかし、IV導入後に完全奏効に至らず、部分奏効(partial response)にとどまる症例のマネジメントは明確でない。多くの国ではIV 4週投与(q4w)への短縮強化が可能だが、日本では未承認であり、治療強化に制限を感じる場面が多い。

 この課題に対して、イタリア・シチリアIBDネットワークが実施した前向き多施設研究PRIVEDOは、14週時点で部分奏効例を対象にIV強化とSC切り替えを比較した世界初の試験である(J Crohns Colitis 2025年10月13日オンライン版)。

 ベドリズマブ皮下注製剤の第Ⅲ相試験VISIBLEがIV導入6週でSCへ移行したのに対し(Gastroenterology 2020; 158: 562-572.e12J Crohns Colitis 2022; 16: 27-38)、本研究はより現実的な導入後中間期(14週)における切り替えを検証した点が特徴である。

小林 拓(こばやし たく)

北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター センター長、病院長補佐、消化器内科部長、北里大学医学部消化器内科学 准教授

「1998年、名古屋大学医学部卒業。関連病院で研修の後、2004年より慶應義塾大学消化器内科特別研究員として炎症性腸疾患の研究に従事、2008年医学博士。2009年、米・ノースカロライナ大学博士研究員、2012年北里研究所病院消化器内科医長を経て炎症性腸疾患先進治療センター副センター長、2022年より現職。 日本消化器病学会(専門医・指導医・学会評議員・ガイドライン委員)、日本消化器内視鏡学会(専門医・指導医・学術評議員)などに所属。日本炎症性腸疾患学会では国際交流委員会、機関誌編集委員会委員長、European Crohn's and Colitis Organisationのクローン病ガイドライン委員を歴任。

小林 拓
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