重症下肢虚血発症前の間欠性跛行の欠如は 予後不良の独立したリスク因子

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 重症下肢虚血(criticallimbischemia;CLI)を発症する前に,間欠性跛行(IntermittentClaudication;IC)の症状を欠く末梢動脈疾患(PAD)患者が存在するが,その詳細は不明である。東京大学大学院腫瘍外科・血管外科の白須拓郎氏らは,アテローム動脈硬化性CLI患者225例の後方視的検討の結果から,CLI発症前のICの欠如は,下肢血行再建術後の下肢切断回避生存(Amputation-freeSurvival;AFS)率低下の独立したリスク因子であることを,Circ J(2015;79:1618-1623)で報告。血行再建術を受けたICの既往のないCLI患者では,糖尿病や低アルブミン血症,歩行機能不良の頻度が高く,術後入院期間が長期化するといった特徴が示された。

研究者の横顔

東京大学大学院腫瘍外科・血管外科
白須 拓郎氏

 白須氏は,2012年に東京大学大学院腫瘍外科・血管外科博士課程(渡邉聡明教授)に入学し,現在4年目。同科は2つの教室から構成され,同大学病院ではそれぞれ大腸肛門外科,血管外科を担当する。白須氏は血管外科の所属だが,臨床研修および外科研修後1年間は,両方の科をローテーション勤務した。「東大血管外科は,消化器や呼吸器などの一般外科研修を基礎にして血管外科に進むシステムになっている。同じ屋根の下で,腹腔内臓器と血管の両方を扱った臨床経験が今後生きるのではないか」と同氏。外科学の基礎を幅広く学べることが,同大学血管外科の魅力の1つだという。

 今回の研究は,同大学血管外科講師の保科克行氏らの指導を受けた。CLI患者を後方視的に検討した結果,CLI発症前のICの欠如が予後不良に関連することが示され,また無症候肢がCLI化する背景の一端が明らかになった。非IC群の特徴として,動脈病変が末梢に多く分布する点以外に歩行機能不良や低アルブミン血症(低栄養状態)など,高齢期の脆弱性の概念であるフレイル(Frail)に含まれる因子も同定された。このような患者は,座りがちな生活状況下で下肢の症状が出ないために受診が遅れ,肢の状態が悪化し,結果的に血行再建術の適応を逸することにつながっている可能性が考えられる。

 白須氏は「日本では,社会の超高齢化および糖尿病や血液透析患者のCLI対策が重要になっている。PAD患者に対する内科的治療の充実,CLIに対する治療成績の向上だけでなく,CLI発症の関連因子を解明する必要性が高まっている」と話している。

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