非保護左主幹部病変,特に高SYNTAXスコア 症例に対する長期成績はCABGがより良好

CREDO-Kyoto PCI/CABGレジストリーコホート2

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 近年,薬剤溶出ステント(DES)を用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応が非保護左主幹部病変(ULMCAD)にも拡大されつつあるが,ULMCADに対するPCIと冠動脈バイパス術(CABG)の術後5年以上の成績を比較した研究は限られている。京都大学循環器内科の塩見紘樹氏らは,初回冠血行再建術の患者登録研究であるCREDO-KyotoPCI/CABGレジストリーコホート2に登録されたULMCAD患者1,004例の長期成績を検討。その結果,PCI群はCABG群に比べてULMCAD,特に高SYNTAXスコアの患者では,術後5年間の死亡/心筋梗塞(MI)/脳卒中リスクが有意に増加したことをCircJ(2015;79:1282-1289)に報告。術後3年時点では,ULMCAD患者全体でPCIとCABGの成績は同等であった(Am J Cardiol 2012;110:924-932)が,今回,術後5年まで追跡したことで交絡因子調整後もCABG群の有意な長期予後改善効果が示された。

研究者の横顔

東京都大学循環器内科
塩見 紘樹氏

 塩見氏は,京都大学大学院循環器内科を2013年に卒業後,同大学特定病院助教になった。同科教授の木村剛氏から“臨床研究においては自ら汗を流して,臨床に即した詳細なデータを集め,十分な検討を行うことで,実地臨床において重要な知見が得られるよう努力するように”と指導されてきた。大学院時代に約半年間かけて,今回の登録研究の参加施設を回って冠動脈造影所見を閲覧し,SYNTAXスコアの評価を行った。「診療現場での詳細を確認し,科学的に妥当な方法で解析を行った上で,客観的で信頼性のあるデータを発信することが重要」と塩見氏。

 SYNTAXランダム化比較試験(RCT)のサブ解析では,ULMCAD患者全体でPCIとCABGの術後5年の主要心脳血管イベント(MACCE)リスクに有意差がなかった(Circulation 2014;129:2388-2394)。一方,今回の解析結果では,ULMCAD患者に対する術後5年の死亡/MI/脳卒中リスクは,CABG群の治療成績が有意に良好であった。こうした結果の相違は,観察研究では選択バイアスを完全に排除できず,またRCTに比べて高齢で多枝病変を有する重症例が多く登録されることや,同研究での患者登録期間が2005~07年と左主幹部病変に対するPCIの過渡期であったという時代背景による可能性がある。同氏は「このように結果に影響を与えるさまざまな試験背景を考慮した上で国内外の臨床試験結果を適切に解釈し,日常臨床に生かしてもらうことが重要」と話した。また,国内の実地臨床での治療成績を継続的に評価することが重要であり,同氏らは第2世代DES時代(2011~13年)を登録期間としたCREDO-Kyotoレジストリーコホート3を予定している。同氏はまた,急性心筋梗塞の治療では病院到着-バルーン時間短縮の効果は限定的で,発症から病院到着までの時間短縮が予後改善に重要なことを報告(BMJ2012;344:bmj.e3257)。現在,プレホスピタルケアの充実,重症心原性ショック治療の研究に取り組んでいる。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする