腹部肥満なくても,心外膜脂肪容積は非石灰化プラークに関連

~石灰化スコア0患者の冠動脈CT評価~

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 冠動脈石灰化(coronaryarterycalcium;CAC)のない患者は,冠動脈疾患や心血管事故のリスクが低いとされているが,非石灰化プラークによる冠動脈硬化や閉塞のリスクはある。広島大学循環器内科の対馬浩氏らは,冠動脈疾患の疑いで冠動脈CT造影(CCTA)を受けたCACスコア0の患者352例の横断研究の結果から,CTで評価した心外膜脂肪(epicardialadiposetissue;EAT)容積,腹部内臓脂肪(visceraladiposetissue;VAT)面積はそれぞれ独立して,非石灰化プラークに関連することをCirc J(2015;79:1084-1091)に報告。腹部肥満やメタボリックシンドローム(Mets)がなくても,EATの多い患者は,Metsや腹部肥満の患者と同程度に非石灰化プラークの検出頻度が高いという。

研究者の横顔

広島大学循環器内科
対馬浩氏
(現・独立行政法人国立病院機構東広島医療センター循環器内科)

 対馬氏は2006年に広島大学を卒業。救急救命医に憧れ,JA広島総合病院で研修を始めると,夜間救急搬送されてくる重症患者の中で,緊急治療により一命を取り留めて社会復帰を果たす患者の多くが循環器疾患だった。心停止や心筋梗塞の患者を前に,循環器医の到着を祈るように待つことの多かった初期研修が2年目に入るころ,自分の専門分野を決めた。広島大学循環器内科(木原康樹教授)に入局後,2011年に同大学大学院に入学,心臓CT研究班に所属し,学位論文として今回の論文をまとめた。


 心臓CTの普及した2000年代前半ごろから,心臓周囲脂肪が,腹部肥満の影響を補正しても,冠動脈プラークに関連することが報告された。今回,CACスコア0患者で,心外膜および腹部内臓脂肪分布が,冠動脈硬化に影響するという仮説を検証。VATやMetsに比べて,EATの影響は小さいと予想したが,実際には非石灰化プラークが同等以上の頻度で検出された。同教授からは“仮説や予想と違っていたことを大切にするように”と常々指導を受けている。「CACスコア0で腹部肥満もなく,動脈硬化がそれほど進んでいないと思われる患者でも,EAT蓄積があれば既にプラークを有している頻度が高く,EATが冠動脈疾患発症にも関与しているのではないかと考えるようになった。このような患者に遭遇した場合は注意して経過観察したい」と対馬氏。


 同氏は,今年4月から現在の病院勤務となり,虚血性心疾患を中心に診療している。大学で学んだことを基に,今後も心臓CTを用いて臨床に役立つ研究を続けていきたいという。

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