1970年代以降,後期高齢者の視床出血が著明に増加

久山町研究

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脳出血の部位別頻度の時代的推移を検討

 久山町研究において,1960年代から70年代にかけて,脳出血の発症年齢のピークが60歳代から80歳代に移動したこと,また70年代以降は脳出血の発症率が下げ止まる傾向が示されていた。九州大学病態機能内科の後藤聖司氏(現・福岡赤十字病院脳血管内科)らは,久山町研究の3集団の追跡データを用いて,時代とともに脳出血の部位別頻度がどのように変化したのかを検討。その結果,わが国では高血圧管理の普及や飲酒習慣の減少によって,脳出血の発症率が60年代から70年代にかけて著明に減少したが,70年代以降は横ばいで推移しており,その背景として後期高齢者の視床出血発症率の増加が影響している可能性が明らかになった(Circ J 2014;78:403-409)。

研究者の横顔

九州大学病態機能内科
後藤聖司氏
(現・福岡赤十字病院脳血管内科)

 後藤氏は,卒後研修を修了後,九州大学病態機能内科の脳循環研究室に所属。6年間の病院勤務を経て,2009年から4年間,久山町研究に参加した。脳卒中専門医として専門性を生かせる研究ができればと考えていたところ,同科の北園孝成教授,環境医学分野の清原裕教授から助言を受け,脳出血の部位別頻度の時代的推移を初めて解析した。

 “最近は被殻の大出血が少なくなった”という声を指導教授や先輩医師から聞いていたが,そうした臨床での実感はやはり当たっていた。しかし,疑問は残った。「高血圧管理の普及とともに,前方循環の破綻である被殻出血は激減した。ところが,被殻出血を免れても,後期高齢者になると好発部位が後方循環に変わり,視床で出血しやすくなるのはなぜか。視床出血は,軽度からやや高い血圧に長期間曝露されることで生じると考えられるが,詳しい病態の解明が待たれる」と後藤氏。

 同氏は,昨年4月から現在の病院勤務に戻り,ヘマトクリットと心血管病に関する久山町研究の結果をまとめている。今後,福岡県内7施設が参加する福岡脳卒中データベース研究(MedicalTribune循環器疾患版2013年12月26日号で既報)に参加する。

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