ヒト心臓幹細胞内のNotchシグナル抑制でラット心筋の再生治療効果が改善

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播種密度の最適化を検討

 米国では,心筋梗塞後の心不全患者を対象に自己心臓幹細胞移植の第Ⅰ相臨床試験が終了し,安全に施行可能と報告されている。しかし,細胞移植で十分な治療効果を得るためには,細胞培養条件,特に播種密度を最適化することが重要になる。大阪大学心臓血管外科の松田剛典氏(現:国立長寿医療研究センター老化機構研究部流動研究員)らは,ヒト心臓幹細胞を低い播種密度(340cells/cm2)で培養することで,Notchシグナルの抑制を介して心筋細胞への分化能が改善し,ラット急性心筋梗塞(AMI)モデルに対する細胞移植の治療効果を改善する可能性があることをCirc J(2014;78:222-231)で明らかにした。また,Notchシグナルが関与するかどうかは不明だが,低い播種密度がヒト心臓幹細胞の増殖活性を高めることが示された。

研究者の横顔

国立長寿医療研究センター
老化機構研究部流動研究員
松田剛典氏

 子供のころから父の影響で山のスポーツに親しんだ。高校卒業後2年間オーストリアに渡り,スキー教師の免許を取得。「なぜ老いるのか」に興味を持ち,帰国後は兵庫県立大学理学部で生命科学を専攻。大阪大学大学院医科学専攻修士課程へと進み(飛び級進学),心臓幹細胞移植の臨床応用を進めている同大学心臓血管外科教授の澤芳樹氏,東海大学教授の浅原孝之氏(先端医療センター兼務)の指導を受けた。米・HarvardUniversityに3カ月間留学し,心臓幹細胞培養法を習得しようとしたが,培養条件が定まっていないことに気付いた。自分たちで培養条件を確立しなければならないと感じ,今回の研究に着手。心筋細胞への分化能を保持し,治療能力のある心臓幹細胞を培養するために,Notchシグナルの抑制が重要なことを見いだした。

 大阪大学での博士課程を終え,2012年4月から国立長寿医療研究センター老化機構研究部で,Ziziminファミリー遺伝子の機能解明に取り組んでいる。同遺伝子は免疫組織のみに発現していて,高齢マウスでは発現が低下していることが知られている。松田氏は「免疫老化のメカニズムを知るために,免疫応答における同遺伝子の機能を明らかにしたい」と抱負を述べている。

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